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天州晴神霊記 第二章――7


 一人残されてみると、 なんとも怪しげな街角である。
 にぎやかな表通りの影に ひっそりと身をすくめているような、
 それでいて 油断なく何かを待ち受けて狙っているような、
 剣呑(けんのん)な雰囲気を感じて、 斎布は居心地が悪くなってきた。

 志信を無理にでも引き止めればよかった。
 衰える気配もない雨を眺めて、 気温が下がったせいばかりでもなく 身震いをした時、
 ガタンと音がして、 飲み屋の戸が開いた。
 あばた面の、 見るからに人相の悪い男が、 斎布を見て にまりと笑った。
「お嬢ちゃん、 中に入んな。 そこじゃあ濡れるだろう」

 人を見た目で判断してはいけないが、
 ここまであからさまに胡散臭(うさんくさ)ければ、 判断しても良し!
「連れを待っているから、 けっこうです」
 即座に断る。

「濡れて風邪でもひいちゃあ気の毒だ。 なんならおれが暖めてやるぜ」
 人の話を聞かない奴だ。
 無遠慮に伸ばしてきた手を邪険に払って あとずさったが、 貧相な男が 後ろに回りこんできた。
「へっへっへ」

 元々人通りが極端に少ない通りだが、
 雨を避けたのか、 周りには人影がまったくない。
「楽しく雨宿りしようや。
 怖がんなくてもいいぜ。 なあんにもしないから」
 じわりと迫ってくるあばた男の唇が 卑しげに歪み、 助平ったらしい顔になった。
 絶対に信用できないに決まっている。

 斎布は 気持ちが悪くなった。
 臣下にも領民にも 大切にされて、 のんびりと育った姫君にとっては、 理解できない理不尽な出来事だった。
 特に スケベったらしいにやけ顔が、 ものすごく気持ち悪い。
 厭だ!
 吐きそう!

「ささ、 遠慮しないで お入んなさい」
「い、 やっ、 つ、 連れがいるんだからね」
 やっと押し出した声が、 ひきつった叫びに近かった。

 その時、 路地の角から 傘を差してのんびり歩く若い男が現れた。
 歩調を変えずに近寄ってくる。
「待たせたね」
 斎布の前で ぴたりと止まった。




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