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天州晴神霊記 第二章――6


 斎布が 何の足しにもならないことを ぐるぐる考えているうちに、
 厳かな中にも華やかな行列が 大神殿の門に消えて、
 太鼓の音が響き、 神事が始まったことを伝えた。
 集まった参詣人達も 拝殿に向かって祈りを捧げる。
 火伏せ神事だというのに「戦争(いくさ)が起こりませんように」とか
「星都が戦火に見舞われませんように」とか 祈っているところを見ると、
 やはり 海辺の争いが 人々の心を不安にさせているのだ。
 厄除けの御札が 飛ぶように売れている。

 斎布も、 拝殿に ざっと拝んで 人々の流れに身を任せた。
 いつの間にか、 二条大路と五条大路が交差する ニ五(にご)ノ目辻に出ていた。
 辻に建つ 白い浄石(きよめいし)の先に、 大きな芝居小屋も見え、 なにやら にぎやかそうだ。
 帰り道とは反対方向に来てしまったが、 そのまま見物したくなった。

「あっちに行ってみよう」
「えっ、 俺も行ったこと無いぞ。
 様子の判らない場所に いきなり行くのは どうかと思……ちょっと待てったら」
 志信の制止は 何の役にも立たず、 斎布は さっさと見知らぬ町並みに足を踏み入れた。
 お姫様は 怖いもの知らずである。

 料亭、 水茶屋、 絵草紙屋、 菓子屋、 土産物屋など、
 故郷ではめったにお目にかからない にぎやかな店が立ち並び、 雰囲気ががらりと変わる。
 これも 都のもう一つの顔だ。

「わっ、 わっ、 あれ何かしら」
「おお、 すごい!  初めて見るものばっかだ」
 案内人であるはずの志信も 一緒になって見物に回り、
 二人とも おのぼりさん全開で大はしゃぎだ。 正真正銘の都見物である。
 行きかう人たちも、 何気におしゃれに着飾っていたりして 楽しい。
 のりにのった二人は、 ふと気がつくと いつの間にやら細い路地に入り込んでいた。

 表通りの にぎやかさとは違い、
 うらぶれた飯屋とか 小さな飲み屋とかが並んだ ごちゃごちゃした一角だ。
 しんとして人の気配がない。
「急に暗くなってきたんじゃない」
 思う間もなく、 大粒の雨がポツリポツリと落ちてきた。
 あっという間に 屋根や地面に音を立てて打ちかかる。
 二人は 近くの軒下に入った。

 しばらく様子を見たが、 いっこうに降り止む気配はなく、
 見上げる空は みるみる真っ黒い雲に覆われて、
 あたりは 真っ昼間だというのに 夕方のように暗くなってしまった。

「これは当分止みそうにないわね。 しょうがないから行こうか」
 歩き出そうとした斎布を引き止めて、 志信が護衛らしいことを言い出した。

「傘を買うが借りるかしてくる。 ここで待ってて」
「あら、 濡れたってかまわないわよ」
「いいから、 待ってて」
 言い置いて、 志信は雨の中に駆け出した。



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