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天州晴神霊記 第二章――5


 星都の中央、 五本の都大路で区切られた五角形は 中町。
 翌朝、 二人は中町の中心にある 大神殿を目指した。

 旧家の大きな屋敷を横目で過ぎ、 洛中警邏隊の本部前を通り、
 草木と花に彩られた おしゃれな遊歩道を抜け、 木の間から見える 公立学問所をやり過ごせば、
 しんとした神域の杜(もり)に着く。
 高く張り巡らされた石垣の上から 大神殿の大屋根が見えた。

「もう、 火伏せ神事の季節なのね」
 しとしとと降り続く雨が終わりを告げ、 日増しに気温が上がって 晴れた日々がやってくる頃、
 火伏せ神事は行われる。
 これを過ぎると、 いよいよ暑い季節の始まりだ。

 神官たちと 神事にかかわる特別な人間以外は、 石垣に囲われた内には入れない。
 一般の参拝客は 石垣の外に立てられた 拝殿に詣でることになる。
 階(きざはし)の欄干(らんかん)も 朱塗りの柱も、
 さっき塗ったばかりのように 真っ赤っかの拝殿は すぐに分かった。
 杜の緑と互いに引き立てあって、 目も覚めるほどに鮮やかだ。
 見落とすほうが難しい。

 二人は、 昨日教えてもらった お勧めの見物場所に陣取った。
 やがて 行列がやってくる。
 参詣と見物に集まった人ごみの中から、
 帝を乗せた輿を眺めた二人は、 予想外の事態に困惑した。

「その場の思いつきとしか思えない、 無茶な提案をした方よねえ」
「女官の皆さんが 笑い転げてしまう方です」
 聞いた話から、 てっきり 世界びっくり面白人間とか、
 見るからにとんでもおじさんとかを想像していた二人は 呆気にとられた。
 帝は威風堂々とした 渋い二枚目だったのだ。

「なんか 予想外だわ」
 志信も こくこくと頷く。

 湧き上がる歓声に、 にこにこと愛想の良い視線で応えても、
 ちゃんと帝に見えるところが 只者ではない。

 斎布は 色仕掛けを断念した。
 どうやれば良いのかも、 実はよく知らないのだが、 その手は効かないような気がした。
 そういえば、 奥さんが三人も居るのだった。

 脅し、 説得、 泣き落とし が残っているが、 それらも効果が期待できるような気がしない。
 切実な理由を挙げて 泣きつけば、 あるいは 少しは心を動かせるかもしれないが、
 あいにく 明確な理由の持ち合わせがなかった。
 『世美雄と樹里姫悲恋物語』では 駄目な気がした。
 他の作戦を考えたほうがいいのか……。



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コメント
1212: by キョウ頭 on 2013/03/23 at 21:21:47

「説得、 脅し、 懐柔、 泣き落とし、 色仕掛け」
「あの帝なら、何だかどれも通じそう」なんて思っておりましたが、意外と強敵か!?

1213:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2013/03/23 at 22:16:10 (コメント編集)

帝ですから。
表向きは、それらしくしないとね。

ん~、表裏のある人物だったみたいです。

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