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天州晴神霊記 第二章――3


 帝が発案した『仲良しこよし計画』を知る者は、 当事者以外にほとんどいない。
 国家極秘計画である。
 故に、 今回の上洛は、 お忍び都見物ということになっている。
 実質は たいして違わないと千勢は踏んでいる。

 それはともかく、 斎布が出かけたい と言うと、 侍女が身支度をしてくれた。
 白い小袖に浅葱の袴、 髪は一つに括られる。
 一見して 地方から出てきた巫女に見える。
 何故地方なのかというと、 星都には 巫女がいない。
 いつの間にか 大神殿の神職は男の神官ばかりになっていたのだ。
 理由は不明だ。
 地方に行けば 巫女はそれほど珍しい存在ではない。
 腰に束ねた霧呼紐を下げているのが、 普通の巫女とは違う程度だ。
 志信は 水干に短袴の裾を括り、 小柄でもあることから、 巫女とお供の童子に見えなくは無い。

 まずは観光名所、 大内裏に向かう。
 もっとも 見物人は中には入れない。 外から眺めるだけだ。
 北の三角形が 丸々大内裏になっている。

「随分と広そうね」
「俺は 領主様のお供で入ったことがある。 めちゃくちゃ広い。
 一条大路に近いほうには 様々な役目の省がある。
 他に、 朝廷で働く役人の官舎があったり、
 近衛(このえ)や大舎人(おおとねり)の兵舎なんかも どこかにあるらしい。
 北の尖った部分が 内裏だな。 帝の御在所(ござしょ)の紫水殿とか 后妃のいらっしゃる後宮がそこだ。
 宮中のお姉さん方が教えてくれた」
 志信が 得意そうに説明する。

 斎布は見慣れているから うっかり忘れているが、 志信も鬼道門一族の生まれだ。
 中身はともかく 充分美少年である。
 おまけに 人懐こい。
 本人が意図せずとも、 情報収集が可能だ。

「よし!  頑張ってひっくり返さなくちゃ」
 想像以上の規模を目の当たりにして、 斎布は気合を入れなおした。

「おお!  もしかして 謀反か。
 しかし、 いくら俺が百人力でも、 二人では人数が足りないだろう。
 そうだ。 俺の手下が八人いる。 あいつらを水輪繋から呼び寄せよう。
 シロも連れてきたほうが良いかな」

「ちょっと待って。
 大内裏の正面で、 謀反なんて大声で言ってどうするのよ。
 しかも 犬まで一味に加えてるし」
「シロは頼りになるぞ」

 帝の計画を取りやめにさせようというのは、 やはり謀反になるのだろうか。
 斎布は考えてみた。 破壊工作になるのかもしれない。
 まあ いいか。

〈縁談中止大作戦その一〉
  朝廷を乗っ取る。
  やり過ぎだし、 年端も行かぬ十人と一匹では 成功の見込みは薄い。 却下。

 他には どんな手があるだろうか。

〈縁談中止大作戦その二〉
  帝に直接当たって砕ける。 もとい、 砕けるな。
  説得、 脅し、 懐柔、 泣き落とし、 色仕掛け……
  どんな作戦にしろ、 斎布は帝を知らないから、 どれが有効な手段かが分からない。
  まずは 敵を知るべきだと考えた。

 こんなに計画的に物事を考えたのは 初めてだ。
 作戦初日、 何もしないうちに 帝を敵に想定してしまった。
 大胆である。



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