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天州晴神霊記 第二章――2


 さて、 表向き 屋敷を取り仕切るのは宗靭だが、
 鬼道の役目を担って、 叔母にあたる 輪(りん)が居た。
 星都の邪気を監視し、 妖魔を退治する役目だ。
 幼い頃には遊んでもらったこともあるが、 都で役目に就いてからは ほとんど会っていない。
 久しぶりだ。 輪にも挨拶をしようと顔を出した。

「あら、 来たのね。 出来損ないの霧呼姫が」
 輪が面倒くさそうな目つきを投げつけて 口を開いた。
 いきなりのことに唖然として、 斎布は 反す言葉がなく、 口をパクパクしてしまった。
 代わりに 志信が文句をつける。
「それって酷くないか。 出来損ないなんかじゃないぞ。 ちゃんと霧を呼べる」
「霧を呼ぶだけなんて、 霧呼姫の値打ちも大暴落ね。 もう底値よ」

 『霧呼姫』は 一族の術者の仲でも、 最高の術者の代名詞みたいなものである。
 歴代の霧呼姫は 一族の誇り、 伝説的な存在だった。
 もちろん 斎布を除いての話だ。
 斎布は、 今のところ 霧を呼ぶことと、 普通に邪気を祓うことくらいしか まともに出来ない。
 伝説までは 程遠い。

 しかし、 志信は負けていなかった。
「木登りは 俺といい勝負だし、 駆けっこも この間まで俺を負かしていた。
 虫取りだって上手いし、 それから…… それから」
「志信、 もういいわよ。 気にしていないから」
「気にしてね」
 すかさず、 輪に突っ込まれた。
「大丈夫だ。 虫取りなら負けない」
 志信が、 諦め悪く繰り返した。

「虫取りが上手くても、 使えないわね。
 まっ、 良かったんじゃないの。 何やら 使い道が見つかったらしいじゃないの。
 山の上で のんびり暮らせばぁ」
 輪に 駄目押しされた。

 使い道がないなら、 無理に使わなくてもいいのに と思いつつ、 斎布は ふとあることに気がついた。
 奇御岳家の三男、 八箭と結婚させられる相手は 十五歳だった。
 木登りや虫取りにこだわる志信の 一歳上 でしかない。
 志信を見ていると、 男の子というものは 一体いつまで子どもなのだ と言いたいくらいに お子様である。
 奇御岳家の三男も、 たいして差がないに違いない。
 形ばかりとはいえ、
 天女のような見かけに反して、全く油断できない姉の婿にされるかと思えば、
 気の毒としか言いようがない。
 笑ってしまう。
「あはっ、 はははは… は…… は…………」
 思わず 声に出して笑ってしまい、 輪に睨まれた。
 乾いた風が 吹きぬける。 ひゅるるーん。

 周りからは、 やれば出来る子なのだからと、 おだてられたり 励まされたりしていたが、
 本人は 期待されすぎても困るのよ とばかりにのんきにしていたのが、
 『霧呼姫』としては、 やっぱりまずかったのだろうか。
 だからといって 『出戻り直行便』はないし、
 それとこれとは 関係なさそうな気がする。

(まっ、 やれば出来る子らしいから、 なんとかなるんじゃないの)
 反省しない斎布だった。



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