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天州晴神霊記 第二章 星都――1


 魔性のものは、 線を与えられると 辿(たど)らずにはいられないという。
 線と線が交差するところには 捕らえられて 動けなくなるという。
 線と線の交点を『目』と呼ぶ。

 星都は その名の通り 星の形をしている。
 都大路が 五芒星に走っているのだ。
 西から まっすぐ東に向かうのが 一条大路。
 そこから 南西に向かうのが 二条大路。
 さらに都の北、 大内裏を目指して 北北東に走るのが三条大路。
 南南東に向かう 四条大路。
 起点に戻る 五条大路というように、 一筆書きの順に名前がついている。
 都大路が交差する場所を 目辻と呼び習わしていた。

 慣れないとややこしいが、 変な形だから仕方がない。
 魔封じの為だ。
 五芒星の線には 始まりと終わりがない。 一筆書きができる。
 故に、 辿り始めれば 永遠に回り続けることになる。
 しかも 五つの『目』を持つ。
 魔封じには とっても都合のよい形なのだ。
 魔性のものは、 直線と交点を こよなく愛好する 間抜けな側面があるらしい。


 星都の西北に当たる 三角地、
 一条、 三条、 五条大路に囲まれた 乾(いぬい)町に 鬼道門家の屋敷がある。
 日暮れも間近に迫る頃、 駆け込んできた二騎があった。
 斎布と志信である。

 姫君ならば 輿で移動するのが普通だが、 今回はいわゆるお忍びである。
 騎馬で 一気に駆け抜けてきた。
 急なことなのに、 出迎えた屋敷の者たちに 慌てる様子がないのは、 報せが届いていたのだろう。
 他家にはない 便利なところだ。

 鬼道門家は その名の通り、 代々鬼道をよくする。
 しかし、 朝廷の 窓際な大学寮や 神殿のように おおっぴらにはしていないから、
 ほとんど一般に知られていない。
 家名が そのものずばりなのだから、 誰か気が付いてもよさそうなものだが、 知らない。
 案外そういうものである。
 水鏡の術を使って、 二人が来ることを連絡してきたのだ。

「霧呼(きりこ)様、 お疲れでございましょう。
 万事承知しております。 まずは お部屋へ」
 留守居役の 湖水道(こすいどう)宗靭(むねゆき)が 当たり前に出迎える。

 鬼道門家では 古い習慣が残っており、
 姫君たちの名を 家中の者が 直接口にすることは無い。
 普通は 一の姫、 ニの姫、 三の姫というように呼ばれるが、 正式に後継者になると 呼び名が変わる。
 跡継ぎは 御水(ごすい)様と呼ばれることが多い。
 八箭も そう呼ばれている。

 稀(まれ)に 特別な呼び名の付く姫がいる。
 斎布は いつの頃からか 霧呼姫と呼ばれるようになった。
 斎布は、 霧呼草の繊維から作られた 指ほどの太さの紐を いつも携えている。
 その紐を振れば、 実際に霧を呼ぶことができるのだ。
 誰でもが出来る技ではない。
 代々の一族に たまーに現れる特殊能力だ。
 鬼道門家の歴史には、 過去二人の霧呼姫が居た。
 斎布は 三人目になる。



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