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天州晴神霊記 第一章――14


「では、 護衛と案内に 颯(はやて)をつけよう」
「は、 は…や…て…… は ちょっと。
 華やかな都では、目立ち過ぎるのじゃないかしら。
 そうだわ、 志信(しのぶ)がいいわ」

 斎布は 颯が苦手だった。
 背も高く、 引き締まった体と苦みばしった精悍な顔は、 人によってはいい男と思うだろうが、
 いかんせん、 無口で ほとんどしゃべるところを見たことがない。
 無口な大男は、 都では浮いてしまって 目立ちまくりになりそうだ。
 その上、 扱いが分からないし、 怖い。

 同い年のいとこ 志信なら 幼馴染のようなものだし、 気が楽だ。
 男の子の成長は この時期 相当にばらつきがある。
 志信は のびのびと育った斎布にも背丈が追いつかないほど 小柄だが、
 幼い頃からガキ大将で、 自分より大きな相手にも ほとんど負けない。
 剣と格闘の腕は確かだが、 稽古よりも 実戦になるとさらに威力を増す類の闘士だ。
 千勢と八箭に付いて 都に行った経験もある。

「いいだろう。 志信を同行させよう」
 千勢は あっさり承知した。
「護衛というけど、 星都は、 悪霊や妖魔を祓う聖なる都なのでしょう。
 危ないことなんてあるの」
 斎布は 単純に驚いた。

「悪霊や妖魔ならば、 さほど心配はせぬ。 怖いのは人間じゃ。
 都には うんざりするほど人が居る。
 大勢居れば、 中には不心得者もおれば、 不満を抱えて悪意を育てる輩も出る。
 そういうものじゃ。 気をつけろ」

 千勢に言われても、 領主の姫君として育った斎布には 実感が湧かなかった。
 水輪繋では 良い人しか知らない。
 颯だって 怖いけれど悪い人間ではないのは分かる。
 斎布は 戸惑いながらも、 ただなんとなく頷いた。

「さあ、 そうと決まれば 支度をしなくっちゃ。
 姉さま、 お衣装は たんともって行きましょうね。
 あら、 都で誂(あつら)えたほうが良いかしら。 迷うわ」

「美以、 そなたは行かないから、 迷う必要はないぞ」
「ええ――っ、 ドサクサ紛れに 付いていこうと思ったのに。 やっぱり駄目?」
 図々しいばかりで、 詰めの甘い妹姫だった。


                      第二章につづく




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