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天州晴神霊記 第一章――12


 やっと姉の言った意味に気づいた、 間抜けで お子様な斎布だった。
 いつも八箭にはしてやられる。

「そういうことだ、 斎布。
 どちらに転んでも、 そなたは行くことになる。
 しかし 居候も預かろう。 ものごとは 偏(かたよ)らぬに越したことはない」
 奇御岳に借りを作るのは 真っ平だが、 貸しを作るのも鬱陶(うっとう)しい。
 後の為にも、 つまらないことを残したくないと、 千勢は考えた。

 斎布がむっつりしていると、
 様子を見に来ていた三女の美以が、 部屋の外から 「はーい」と手を挙げて入ってきた。
「私が嫁に行く」
 座る早々、 身を乗り出すように目を輝かせる。

「次郎三郎は 都でも評判になった美形なのでしょう。 見た―い」
「そなたは軽いのう。
 無論、 誰でもかまわないのだが、 見栄えというものがある」
 千勢は、 美以をつくづく眺めた。

「八箭姉さまには負けるけど、 斎布姉さまになら勝っていると思うわ」
 自分で言うだけあって、 美以は可愛い。
 しかし、 十歳という年を考えても小柄なのだ。
 どこからどう見ても、 幼い子どもにしか見えない。

 帝は 宮中で婚儀を執り行いたいと言っていた。
 大勢の目に触れるだろう。
 この子を出したら おままごとになってしまう。
 いくらなんでも説得力に欠ける。
 それはまずい。

「やはり、 斎布が良いだろう。
 それに、 二郎三郎は世継ぎを降りた。
 相手は次男坊のほうだ。 ソコソコらしいぞ」
「なあんだ。 やっぱりやめる。 斎布姉さま、 頑張って」
 美以は 片手をひらひら振って、 後ろに下がった。
 しめた、 と思ったのも束の間、 斎布の受難は回避できないらしい。

「やっぱり納得できない。 喜谷部や門多義とは違う。
 鬼道門は 無駄な争いを起こして滅ぶほどの間抜けじゃないもの。
 それに、 どんな美形だか知らないけど、 駆け落ちなんかありえない。
 美以なら する?」
「うふふ、 いやねえ。
 万が一 好きになることがあっても、 もっと上手くやるわよ」
 美以の返事には呆れるが、 やっぱり想像も出来ない。

「そもそも、 ありもしないことに怯ええている というのが信じられない。
 本当なの?」
「腹立たしいが、 本当だ。
 水輪繋に居ては 分からぬことだ。
 このままでは 世情が不安定になることは充分考えられる」

「それでも 他に方法があるはずよ。 断固反対!」
 徹底抗戦しそうな勢いの斎布を見て、 千勢は首をかしげた。
「珍しいな」




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