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天州晴神霊記 第一章――8


 見習い神官は 散々迷って、 ようやく役目を果たし、 帰途に就こうと建物を出た。
 忙しげに行き交う人々が 今になって 湧いて出たようにたくさんいるが、
 大内裏は広すぎて、 混雑はしていない。
 見渡せば、 ちゃんと門が見えるから、 大丈夫、 帰れそうだ。

 思い返せば、 変な話を聞いたような気がする。
 あれは何だったのだろう。
 ちょっと気になるが、 聞かなかったことにしよう。
 嫌な予感がする。 忘れてしまおう。

 と、 その時、
「待て」
 鋭い声で呼び止められた。
 近くに人影はないから、 呼び止められたのは自分だろう。
 道を聞かれてもわからないんだけどなあ と振り向くと、 睨みつける顔がある。
 壮年というには若々しいが、 若者には無い大人の男の魅力を備えた 美丈夫がいた。

 見習い神官には 初めて見る人だったが、 瞬時に思い当たるところがある。
 立派な風采といい、 年頃といい、
 都一の有名人 二郎三郎の父、 奇御岳赫衛ではないだろうか。
 面差(おもざ)しが似ている。
 この神官も 見に行って卒倒しそうになったくちだ。
 星都に来ている と小耳に挟んでいたが、 噂に違わぬ美しさだと、 見ほれてしまった。

「先ほど、 盗み聞きをしていたな」

 神官は 慌てふためいて言い訳をした。
「いえ、 たまたま迷ってしまって、 通りかかっただけでございます。
 盗み聞きなど、 とんでもありません。
 『弄ばれた』とか 聞いていません」

 すぐに逃げたのに、 どうしてばれたのだろう。
 では、 あの部屋にいたのは この方だったのだ。
 ぼうっとしていたから、 言わずもがなのことを口走ったことに気づいていなかった。

「ふっ、 あれは冗談だ。 陛下との楽しい歓談を盛り上げる 軽い冗談だ。
 本気にするな」
 しかし、 顔が怖い。
 冗談を言っている顔ではない。
 でも、 冗談なら笑わなくては。
「ひっ、 あは、 は、 は、 は……」
 無理やり笑おうとして、 完全に失敗した。

「仕方が無い。 あれを本気にされてはかなわん。
 特別に 本当の訳を教えてやろう。 初代帝の命令なのだ。
 二家は 帝の両翼となり、 子々孫々まで国を守れ。
 そのために 決して馴れ合ってはならぬ。
 それぞれの道を貫き、 互いに気を許すことなく仕えよ、 とな。
 これは国家の秘事だ。 けして他言はするな。
 言いふらせば、 首が 肩から離れるぞ。 よいな」

 烈火の如き視線を残して、 ようやく解放された。
 秘密なら言わないで欲しかった。
 嫌な予感が当たってしまった。
 ほうほうの体(てい)で逃げようとして 方角を間違え、 また迷いそうになってしまった。
 早く帰ろう。



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コメント
1190: by lime on 2013/03/09 at 16:27:29 (コメント編集)

ほんとうに。
秘密ならば言わないで欲しかったですよね。
一体どっちが本当なのやら。

しかし、絶世の美男美女の両家。
ゴシップには興味のない私ですが、どんな子供が生まれるのだろうと、そんな興味が・・・。
そこまで、いけないのかな・・・。

おかげさまで、戻ってまいりました。
ちょっと今、まるで頭が働かなくて、困っています(いつも割とそうなのですが^^)

1191:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/03/09 at 17:14:54 (コメント編集)

早々にコメントをありがとうございます。

まだ序盤も序盤ですから。
今度のは少し長めになるかもしれません。

私ものんびりやろうかと思います。
limeさんも、くれぐれも無理しないでくださいね。

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