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天州晴神霊記 第一章―7

「何処が一件落着ですか」
 二人揃って、 異口同音に噛み付いた。
「奇御岳から 居候を一人鬼道門に預ける。
 鬼道門から 姫を一人奇御岳に預ける。
 一件落着ではないか。 めでたし、 めでたし」

 二人は 苦い顔をした。
 帝にしてやられた感が否(いな)めないが、
 双方とも 我が子を気に食わない相手に預けたくないのだから、 一組では話がまとまるはずがない。
 他に方法は、 たぶん無い。

 四郎五郎と八箭は世継ゆえ、 他家には出せない。
 八箭十六歳と六郎太十五歳、
 四郎五郎十七歳と斎布十四歳 の組み合わせになった。
 できる限り悶着を起こさぬため、 それぞれの城の一角に別棟を設け、
 出入りする門も分けて 治外にすることに決めた。
 顔を合わすことがなければ 面倒なことにもなるまい。
 じっと我慢の三年間になる。


「聞いても良いか。
 そもそも 両家は何故に仲が悪いのだ。 大昔からの隣人だろうに」
 赫衛が小さく咳払いをして、 天井を見上げた。
「本当のところは良く分かりませんが、
 我が家に伝わる秘密の言い伝えによると、
 初代帝 天州晴伊波礼命(いわれのみこと)に仕えた先祖が、
 鬼道門家の先祖に弄(もてあそ)ばれた挙句に、 手ひどく捨てられたとか……」

「ふん、 たわけたことを。
 我が家の秘伝では、
 奇御岳の先祖から言い寄ったくせに、
 次々と他の女子(おなご)に手を出して、 どうしようもない奴だったと言われておる。
 ごくつぶしの浮気者じゃったとな」

「うわあ、 いったい どんだけしつこい痴話喧嘩だ」
 庭に かすかな足音がした。

 足音のぬしは、 迷い込んだ見習い神官である。
 公式行事の日程の吉凶を報せる使いに出されたが、
 慣れぬ上に やたらと広い場所で迷ってしまった。
 方向音痴の気(け)がある。
 誰か 人に行き交うことがあれば 聞くしかないと決心したものの、
 意に反して ひと気の無い場所に迷い込んでしまった。
 ついに 自分が何処にいるのか さっぱり分からない状態になり、
 困り果てているところに 声がしたから近づいたのだが、
 来てはいけないところに来てしまったらしい。

 開いた窓から見えるのは、 なんと帝だ。
 神事の折に、 大神殿で 遠くからちらりと見たことがあるだけだが、 見間違いではなさそうだ。
 場所を聞くなど もってのほかである。
 足音を忍ばせて、 すたこらさっさと逃げた。



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