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天州晴神霊記 第一章――4


 奇御岳赫衛(かくもり)と 鬼道門千勢(ちせ)は 脇殿になっている小さな部屋に通された。
 同じ部屋に通されても、 互いに視線も交わさず 会釈もなければ もちろん会話はない。
 そもそも、 両家の当主が同席することなど ありえない事態だったが、
 帝の直筆の文を貰えば、 従わないわけにはいかない。

 やって来たものの、 互いに完全無視の態勢だった。
 そんな二人を、 帝はニコニコ見比べる。
「考えたら、 二人一緒のところを見たのは 初めてだ」
「……」
「……」
「珍しい眺めだ。 うん」
「……」
「……」
「なんか、 面白いものを見ている気がする」

「陛下、 ご用件を承りたい」
「陛下、 ご用件を伺いましょう」
「わっはっはっは、 息がぴったりではないか」
 二人とも、 毛筋ほども動揺しない。
 手強い。

「では、 用件を言おう。 仲良くして欲しい」
 何の仕掛けも 芸もない言い方である。
 二人は、 さすがに眉をひそめた。
「ご心配なさらなくとも、 門多義と喜谷部のようなことにはなりません」
 千勢が ぴしゃりと言う。
 不穏な噂は 二人の領主の耳にも入っていた。
 当然、 赫衛にも千勢の声は聞こえているのだが、
 赫衛は まさに同じことを言おうとしていたことなど、 微塵(みじん)も表すことなく、
 だんまりを決めている。

「余もそう思う。 だが、 余が思うだけでは足りないのだ。
 朝廷だって いろいろやってみてはいるのだが、 民は浮き足立っている。
 都を逃げ出そうと 準備をしているものまで出ている始末だ。
 赫衛の子は 何歳になった」

 赫衛の憮然とした顔に、
 帝は 困ったように人差し指で頭を掻きながら 問いかける。
「長男二郎三郎(じろさぶろう)十八歳、 次男四郎五郎(しろごろう)十七歳、
 三男六郎太(ろくろうた)十五歳、 四男七右衛門(しちえもん)十二歳、
 五男八色(やくさ)八歳 の五子にございます」
 どういうわけか、 奇御岳家の主(あるじ)には 昔から男子しか生まれない。

「順番が名前とずれていて ややこしいな。 太郎はおらぬのか」
「領地を守る御山を 太郎岳といいます。
 敬意を表して、 代々太郎は名乗りません」

「ふうん、 二郎三郎も独り身で未だ妻がいない。 そうであったな。
 あんなものを野放しにしておくから、 こういうことになるのじゃ」



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