FC2ブログ
RSS

赤瑪瑙奇譚 第二章――9



 翌日、 ユキアとホジロの二人と別れたカムライは、
 イヒカを伴い、 駆けつけた一隊と共に 砦の奥を調べたが、例の部屋は もぬけの殻になっていた。

 イヒカは 嘘をついていると思われるのが嫌で、 必死に叫ぶ。
「本当に あったんだ!  嘘じゃない!」

「少なくとも、 何かが あったことは確実でしょう。 きれい過ぎる。
 他の場所は 埃だらけなのに、 ここは 塵一つ落ちていない」
 隊を率いてきた逞(たくま)しい男が、 落ち着いた様子で言った。

 やがて、 砦の中を調べていた兵士の一人が来た。
「隊長、 床板の割れ目の下で 見つけました」
 差し出したのは、 新しくは無いが 手入れされた一本の槍だった。
 慌てて運び出した時に 落ちたと思われる。

「私は この砦の最後の戦いに 加わっていました。 撤去する時には 複雑な思いがありましたよ。
 これで平和になる。 しかし、 共に戦った者たちが、 ここで……」

 隊長は、 唇を引き結び、 しばらく言葉を失っていたが、 次第に 怒りに顔が赤らみ始め、
「何者の仕業か知らぬが、 許せん!」
 吐き出すように 言い切った。

 イヒカは じっと見た。
 隊長は 自分の話を 真面目に聞いてくれた。
 あいまいなところは 鋭く訊きただされ、 いい加減な言い方は 許さない とばかりに 追求されて、
 少し怖かったが、 それでもいい。
 真剣に 聞いてくれただけでいい。
 話を聞いてもらえただけで、 少し 寂しくなくなった。
 自分が 心細い思いでいたことに、 やっと気がついた。

 砦の最後の戦いで 父親は死んでしまったけれど、 この人と一緒に戦ったのだ。
 そう思うと、 なんだか誇らしかった。

 大事に握り締めていた琥珀を見る。
 名残惜しいが、 自分も 礼節を返さなくてはならない と思った。

「そこで拾った。 持ち主に 返してやって。 たぶん、 ここで戦った人の物だろ?」
 隊長は 穏やかな顔に戻り、 きっと探して返す と約束した。


 すかさず 消えた武器を追って、 付近一帯をくまなく捜索したが、 行方は杳(よう)として知れなかった。
 たった丸一日足らずのうちに、 大量の武器が 消息を絶ったのだ。


                             第三章につづく


戻る★★★次へ


トラックバック
by まとめwoネタ速neo on 2012/05/12 at 19:24:10

 翌日、 ユキアとホジロの二人と別れたカムライは、 イヒカを伴い、 駆けつけた一隊と共に 砦の奥を調べたが、 例の部屋は もぬけの殻になっていた。 イヒカは 嘘をついていると思...

トラックバック送信先 :
コメント
72:こんにちは by ようこ on 2012/05/13 at 19:31:57

初めまして、訪問をありがとうごさいます。
小説家を目指しているのでしょうか?
斜め読みですが読み易いです。現実から離れた世界に憧れます。夢の世界です。頑張ってください。
花の名前を教えて下さってありがとうごさいます。さすがに物知りなのですね。マンションでお花づくりは大変だと思います。きっとお上手なんですね^ 私は土地の上でもうまくできないです。

74:Re: ようこ様 by しのぶもじずり on 2012/05/14 at 23:48:26 (コメント編集)

いらっしゃいませ。
私も、花の事など 他ブログ様に教えていただくことが多いです。

177: by 十二月一日 晩冬 on 2012/06/18 at 00:29:47

ここまで読んだ感想を―次から三章です。
兎に角読みやすいです。
しのぶもじずりさんの作品って、情景描写が抜きん出ている感があるんですが、独学ですか?
いやはや、はやく第六章に追いつきたいです!

178:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/06/18 at 00:57:20 (コメント編集)

ありがとうございます。
≪作者 読者のなれの果て≫ってことで、読むのが好きで、
何でもかんでも読みまくってただけです。活字中毒ってやつでした。
自分で書くようになってからは、そっちが大変で、読む量が減りました。

書く時に情景をビジュアル的にイメージしたりはします。
あと、立ち回りを書く時に、自分で動いて、殺陣の動きをやってみたりして、怪しい人になる事も……。

一回分が短いですから、あわてなくても すぐに追いつきますよ。

405: by blackout on 2012/08/09 at 01:08:50

時間が取れたのでここまで読ませてもらいました

自分の小説と違って確かに登場人物が多いですねw
人物紹介ページは常にタブで開いていますw

今後の伏線になりそうな箇所が結構あったので、どのように展開していくか楽しみですね

407:Re: blackout様 by しのぶもじずり on 2012/08/09 at 11:17:27 (コメント編集)

いらっしゃいませ

> 人物紹介ページは常にタブで開いていますw
人物紹介ページを作って正解でしたね。
小説を書いている先輩ブロガー「DOOR]のlimeさんから アドバイスを頂いて作りました。

登場人物が多いですかね。増えちゃうんです。

1104: by デジャヴ on 2013/02/10 at 20:10:13

イヒカ、いい味出してますね。
出てきたばかりなのに、心惹かれるキャラクターです。
カムライも一章でのイメージとがらりと変って、豪胆・豪快な雰囲気ですね。
さて、これからどう物語が動いていくのか楽しみです。
また読みに来ます^^

1105:Re: デジャヴ様 by しのぶもじずり on 2013/02/10 at 22:18:39 (コメント編集)

ありがとうございます。
イヒカは私も気に入ってます。

カムライが豪胆・豪快になってますか。
良かった。ヘタレに見えたらどうしようと思ってました。
コクウの英雄ってことで、宜しく。

3212: by 椿 on 2015/09/29 at 20:28:27

マホロバ王国でユン、っていうのがドキッとします。
あのユンはこことつながっていたのかなあ、って。火梛がユンのことを忘れないで、自分の娘や孫に『ユン』という愛称をつけたのが代々受け継がれているのかなあ、って想像したり。

執筆なさった順だと逆だし、パラレルかもしれないですけど、読者は勝手に妄想しますです(^_^;)

こちらのユン、恋愛にも戦いにも活躍しそうですね。次章も楽しみにしております!

3213:Re: 椿様 by しのぶもじずり on 2015/09/30 at 09:37:42 (コメント編集)

ユキアは、お察しの通り火梛の子孫ですが、
弓弦と愛称が同じなのは偶然です。
マホロバでは、よくある愛称ってことです。
妄想していただいて恐縮です。ありがとうございます。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア