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天州晴神霊記 第一章 妹背川 ――1

 帝の職場は 極光殿(きょっこうでん)。
 内裏(だいり)を含む 大内裏の ほぼ中央に位置する。

 テキトーにしか見えない勤務態度で、 朝も早よから 仕事をする帝の元にやってきたのは、
 侍従を務める 中納言鹿杖(かぜつえ)である。
 帝のお気に入りで、 参議の時に目を付けられて、 侍従に抜擢された。
 三十歳にもならぬのに中納言とは、 異例の出世である。
 帝の寵愛を一身に受けているからには、 美青年かと思えば然(さ)にあらず。
 見た目は ただのぼんやりさんにしか見えない。
 しかしながら、 えこひいきと言われないだけの 確かな実力があった。

「鹿杖、 海辺の領地は順調か」
「有能な代官を送り、 なんとか基礎は押さえましたが、 効果が出るまでには 時がかかりそうです。
 しばらくは 海辺の民は苦労することでしょう」
「まったく いい迷惑だ。 何故あんなことになったのやら」
 帝は、 珍しく渋面を作った。

 近来稀に見る大騒動で、 せっかく穏やかに治めてきたというのに、
 一部とはいえ 国土が荒れたのは、 とっても残念に思っていた。
「きっかけは 叶わぬ恋の駆け落ち騒動ですが、
 何故 門多義家と喜谷部家の仲が悪かったのかは、 どうしても分かりません。
 もしかして、 とてつもなく些細な原因だったのでは、 という気がしないでもないです」

 長い間の確執というものは、 第三者が後から聞けば 馬鹿馬鹿しく思う事も珍しくない。
「ふうん。 他には無いのか。 そういう 危ない悶着を起こしそうなところは」
 もしあれば、 早いうちに 芽を摘む算段を考えなくてはならない。
 当事者が滅ぶのは自業自得だが、 周りが迷惑する。

「阿嵯緒(あさお)家と毅螺(きら)家は、
 三代前の御世(みよ)に領地替えをしてからは 平穏に過ぎています。 残るは一箇所のみ」
「何処だ。 そこも領地替えしちゃおう」
「できません」
「何故だ。 余が許す」
「陛下でも無理」

「余は、 一応帝なんだけど」
「一応じゃ無理です。
 ここに都を開いた 佐師布津(さじふつ)帝のご遺言もございます。
 奇御岳(くしみたけ)家と 鬼道門(きどうもん)家を 領地替えにはできません」

 聞いた帝は、 素っ頓狂な声をあげた。
「あっ、 忘れてた。 あの両家か。
 仲が悪いのが当たり前になっていたからなあ」
「私もです。
 ですが、 忘れていない民が 思いのほかたくさんいたようです。
 門多義家と喜谷部家の騒ぎで、 不安が吹き出してきました」




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コメント
1181: by on 2013/03/01 at 09:00:11

(*・д・)ノ*:゚★おはようございます☆・゚:*:゚
「天州晴神霊記」うむ~~難しい・・・(*'‐'*) 笑^^
応援♪~ポチッ☆彡
いつもご訪問頂きまして♪
°・:,。★\(^-^ )♪ありがとう♪( ^-^)/★,。・:・°ございます。

1182: by 彦星 on 2013/03/01 at 09:03:20

名前を書くのを忘れちゃった。(*≧m≦*)ププッ^^

1183:Re: 彦星様 by しのぶもじずり on 2013/03/01 at 11:02:39 (コメント編集)

お名前がなくても、キラキラのコメントで、すぐに分かりましたよ。(笑)

漢字がいっぱいです。カッコイイでしょ。
今回、題名に凝ってみました。

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