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泣きわめく子ども  6

 恵比の授業は、 三年間の間に 段取りが出来上がっていた。
 細かい指示をしなくても、 生徒たちは 段取りに従って動く。
 いさ子は、 それが分からず、 たまに うろうろしてしまう。

 その日、 国語の授業が新しい章に入った。
「読んで、 読めない漢字があったら、 ノートに書きなさい」

 いさ子は、 教科書で、 読めない漢字に出会うことがほとんどなかった。
 月に一度、 書店から届く、子供向けの文学全集と漫画雑誌の各一冊を、 くりかえし読んでいた。
 どちらも、 全部ふり仮名がふってあり、
 小学校で習うような漢字を いつの間にか覚えてしまっていた。
 しかし、 その時、 珍しく読めない字がひとつだけあった。
 ノートに書いた。

 一人ずつ指されて、 教科書を読む。
 いさ子が指された部分に、 ちょうど読めない漢字があった。
「読めません」
「読めない字はノートに書くように言ったでしょ。
 ノートを見なさい。 書かなかったの」
「書きました」
 ノートには、 教科書から書き写した漢字が ポツンと書いてあるだけだ。
 見たところで、 読めないものは読めない。
 おかしなことを言う と首を傾げた。

 恵比が つかつかと近寄る。
 足音が苛立たしげだ。
 いさ子のノートをひったくるように取り上げて 確かめ、
 いらだたしげにノートを放り出し、
 次に、 乱暴に教科書をつかんでページをめくると、 バンと机に叩き置く。
「ここに、 新しく出た漢字が載っているでしょ!」
 声が完全にキレている。 怖い。

 いさ子は、 そんなページがあることに気が付いていなかった。
 へえ、 便利だなと感心していると、
「読み方も書いてあるでしょ!」
 ふと眼を上げると、 恵比の顔が鬼になって、 睨みつけていた。

 いさ子は、 自分の中で、 プチンと何かがはじける音がしたような気がした。
 その後の授業で何を習ったのか、 覚えていない。
 はじけたところから、 めりめりと裂け目が広がっていくのを感じていただけだった。

 チャイムが鳴った。
 授業が終わった。

 いさ子は、 ふらふらと廊下に歩き出した。
 バーン。
 広がった裂け目が、 耐えきれず炸裂した。

 いさ子は号泣した。



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コメント
1138: by lime on 2013/02/22 at 00:29:47 (コメント編集)

なんなんですか、この先生。
いじめっ子よりもたちが悪い~。
なんか、変なものでも取り憑いてるんでしょうか。
腹立つ~~。><
頑張れ子供。

1139:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/02/22 at 10:32:08 (コメント編集)

> なんなんですか、この先生。
すいません。

この部分は子どもの視点で書きましたので、こんなことに……。
子どもは、大人の顔色を読む天才です。
大人の視点で文章にすると、もっと分かり難い表現になったかと思います。

(恵比視点の記述は、思い切りよく削除しました)

> いじめっ子よりもたちが悪い~。
子どもは大人の鏡です。

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