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泣きわめく子ども  4

 学校に呼び出されたヒロは、 不機嫌だった。
 面倒な事はご免だ。
 いさ子が、 呼び出されるような不始末をしたのか という怯えもあった。

 嫌々やってきた職員室で、
 娘と並んで立つ前に、 バン と音高く教科書が投げ出された。
「教科書を手に入れるおつもりが無いようなので、
 私が知り合いの上級生に頼んで もらっておきました。
 使ってください」
 恵比は、 頭から角が生えそうなほどに睨んだ。

「分団の上級生にもらいなさい と言ったわよね。
 分かった と返事したわよね。 何故、 ちゃんとやらないの!」
 ヒロは 娘に怒鳴った。
 まだ教科書が無かったことに 気付かなかった自分への分も、
 いっしょくたにして、 怒鳴った。
 いさ子は、 怒りに燃える二人の大人を前にして、 ぼうっとしていた。
 言われたような気がする。
 そんな気がするが、 吃驚して思い出せない。


 その小学校では、
 一年生から三年生まで クラス替えをせず、 担任も同じ教諭が担当する。
 四年生に上がる時、 クラス替えと担任の交代が行われる仕組みになっていた。

 恵比は、 一つ深呼吸をして、 教室に向かった。
 季節外れの転校生のせいで、 すっかり調子が崩れた。
 いつまでたっても 教科書を手に入れない。
 業を煮やして、 上級生を担当する教諭に頭を下げた。
 つまらないことで 同僚に借りを作ってしまった。

 余計な手間をかけさせられたが、
 これで安心して、 三年間指導してきた自分のクラスで、 いつも通りの授業ができる。
 あと少しで 一段落だ。
 新年度から、 新しい一年生を受け持つことになるだろう。
 それまでに、
 少しは ぼんやりした転校生の学力を、 この学校のレベルに追いつかせ、
 クラスの足を引っ張らない程度にしてやらなくてはならない。

 辺鄙なところに居たらしいし、 しばらくの間、 教科書も無かったのだ。
 勉強が遅れているだろうが、 分け隔てなく指導してやろう。
 久しぶりに 落ち着いて授業ができる。
 恵比は教室に入り、 授業に取り掛かった。



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