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蜻蛉の願いはキンキラキン 第十章―12 最終回


 赤い宝珠が 滲むようにかすんでいる。
 ゆらりゆらりと瞬きながら、 紅焔草の草原に溶け出すかのごとく 流れて消えた。

「ギャーッ、 嘘―。 何で、 何で消えちゃったの」
 蜻蛉が ひきつけを起こしそうになっていた。

「……あっ」
 心当たりがあるらしい声に反応して、 みんなが一郎の顔を見た。
「二歳八ヶ月、 今日で九ヶ月……」
 やっぱり意味不明な面々が、 視線で一郎を問い詰める。

「あっ、 分かった。 365×2+30×9=1000です。
 一百(すもも)ちゃんが生まれた日に、 おじいちゃんが 一百ちゃんの無事な成長を 赤い宝珠に願ったんです。
 一百ちゃんが生まれた日から、 今日が千日目なんですよ」
 星白も思い出した。

 蜻蛉たちにとって 未だ詳細は不明ながらも、
 赤い宝珠が消える日が来ていたのだ ということだけは分かった。

「……あああ、 妖精の踊りが見たかったのに…………。
 よし、 また現れるまで待つぞ。 他の宝珠はあたしのものだからな」
 根性を見せる蜻蛉に、 桜は 冷たく引導を渡した。
「無理だな。 再び現れるまで 千日以上かかるぞ。 待っている間に他のが消える」
「そんな。 本当にそうなのか」
「うん、 間違いない。 私のほうが おまえより宝珠には詳しい。 お疲れ」
 簡単に片付けようとする桜を、 蜻蛉は恨めしげな目で睨む。

「じゃあ、 あとの七つが消えるのを ただ待っているしかないのか?」
「そういうことだろうな。
 どれも見事な玉(ぎょく)だから、 砕いて 指輪や首飾りにでもすれば 高く売れるだろうが、
 いずれ消えるから 詐欺で捕まる。 やめたほうがいい」
 卵形宝珠を砕こうなどという不埒なことを考えるのは、 桜以外にはいないだろう。
 他の四人が あきれているが、
 桜は 自分の荷物から ごそごそと于鉧(うけら)で買った玩具の宝珠を取り出した。

「ほれ、 これをやるから 棚に飾って楽しめ」
 蜻蛉に赤いのを渡す。
 ついで、 星白に白を、 一郎に青を、 八尺に紫を渡した。
「お土産だ。 記念にとっとけ」

 星白は ひとつ瞬きして、 にっこり微笑んだ。
「ありがとうございます。 いい記念になります。
 僕、 世界を救う方法を自分で探します」
「うむ、 なるほど記念か。 それも良い」
 一郎も感慨深げにうなずいた。
 八尺は黙って懐にしまい、 何か考えている。

 突然、 蜻蛉が大声で叫んだ。
「あーああ、 面白かった。 世界って面白い! 
 あちこち行って、 いろんなものを見て、 半分くらい 世界を征服した気分だ」

「そうだな。 おまえが見聞きした世界は、 もうおまえのものだ。
 ……おお!  私も たまには良い事を言う」
 一人悦に入っている桜を置いて、 それぞれが歩き出した。

 真昼の草原に 紅焔草が赤く揺れてざわめき、 歩き出した彼らを見送った。

 蜻蛉が 小さな声でつぶやく。
「次は頑張って、 世界を全部征服するぞ」
 その呟きを聞いたのは、 通り過ぎる風と紅焔草。



                           



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コメント
1110: by キョウ頭 on 2013/02/13 at 21:09:28

完結しましたか!
執筆、お疲れ様でございました!

いやぁ、見事な「すももちゃんトラップ」でしたネ。
というか私、宝珠に賞味期限があったのを、スッカリ忘れていましたヨw

にしても、「このまま蜻蛉が引き下がるワケない」とは思いますが…さて!?

1111: by 晩冬 on 2013/02/13 at 23:03:39

お疲れ様でした!!
個人的にはかなりハッピーエンドww
締めも桜御大が鮮やかに(笑)
存分に笑わせて貰いましたー

1112:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2013/02/13 at 23:37:49 (コメント編集)

終わりました。

> というか私、宝珠に賞味期限があったのを、スッカリ忘れていましたヨw
しまった! 途中で賞味期限を押しておいた方が良かったでしょうかね。
ほとんどの方が忘れているかもう。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

1113:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2013/02/13 at 23:41:49 (コメント編集)

お疲れました。

今作は、おふざけとお笑い路線を狙ってみました。
笑って頂けたみたいで、良かったです。

たまにはシリアスなのも書いてみようかなっと。

また遊びに来て下さいね。

1114: by lime on 2013/02/14 at 07:55:11 (コメント編集)

私も、賞味期限(?)があったのを忘れていましたが、ラストはこうでなくっちゃ、と思いましたね。
一番ヒロインが信用できない物語が、斬新でした(笑)
次はこの蜻蛉、どんな騒動を起こすのか、心配ですがw。
お疲れ様でした。

1115:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/02/14 at 12:47:47 (コメント編集)

やっぱり、賞味期限は忘れられていましたか。
どこかに一度、修正を入れておこうかと思います。

大事なことは、二度三度書いておかなきゃですよね。
特に長編だと、途中で忘れられてしまう。
作者だけが覚えているようでは問題ありですね。
気をつけようと思います。(このこと自体を忘れたりして(笑))

1572: by レバニラ on 2013/08/20 at 11:35:56 (コメント編集)

どうも、こんにちはです、
遅くなりましたが、とうとう最後まで読ませて頂きました。

ピカレスクロマン・・・とは言い難いかもしれませんが、でも子供がちょとした悪事を働く時のドキドキ感は伝わってきました、
自分も昔はトンデモないガキで、ウソついて人の物を持ち出したり、こっそり自分の物にしたりしてましたから(^^;
しかもその後、自分が犯人じゃないという顔で「何処其処に落ちてたよ~」と、返しに行く時はスリルよりも“恐怖”を感じて、あまりやりたくなかったというのが始末に負えません。

それはさておき、最後は星白君が主役になってくれた(?)お陰で、今までの流れからは信じられない程に爽やかなお話で幕を閉じましたね、
それまでの「悪事で味わえるスリル」も良かったですが、こういう「人助けで味わえる幸福感」というのも悪くありませんね。
 で、その悪事を働く側の蜻蛉ちゃんですが・・・なんだか将来、悪事が元で何かトンデモない目に遭いそうな予感しかしません、
で、結局星白君に助けられる・・・とか(ベタだなぁ(笑))

夜にでもまた、あとがきにコメントしようと思います、
それでは、暑い日も続きますが、お体にお気を付け下さいね。

1573:Re: レバニラ様 by しのぶもじずり on 2013/08/20 at 17:40:08 (コメント編集)

最後まで読んで頂いて ありがとうございます。

レバニラさんも、けっこうなワルガキでいらしたのですね。
蜻蛉は、もうちょっと悪くしても良かったかなあ(笑)

後味が悪いのは、あまり好きではないみたいです。
後味だけは良くしようと……。

>  で、その悪事を働く側の蜻蛉ちゃんですが・・・なんだか将来、悪事が元で何かトンデモない目に遭いそうな予感しかしません、
> で、結局星白君に助けられる・・・とか(ベタだなぁ(笑))
世界征服を狙うやつですから、とんでもない目に遭っても自業自得ですね。
ありそうです。

楽しいコメントを、ありがとうございました。

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