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蜻蛉の願いはキンキラキン 第十章――9

 しばらく歩くうちに 正気に戻ったのか、 蜻蛉が、 ぼさぼさ頭をさらにかき乱した。

「うわあ、 あたしもしかして、 えらい事を口走っちゃった?」
「どうも、 そのようだ」
「うーん、 どうしたら良いんだろう」
「まともな戦いで おまえが星白に勝てるとは思えん。
 尻尾を巻いて逃げるか」
「…………………………嫌だ」

 蜻蛉は なおも頭をかきむしりながら、 ぶちぶちと意味不明の呟きを漏らして歩いていたが、
 一軒の農家を目にすると、 めがけて突進し、 泊めてくれるようしつこく交渉し始めた。
 農家のおかみさんは 負けた。

 借りた部屋で、 蜻蛉は床に転がり、 クネクネと悶えている。
 土の中から いきなり掘り出されて、 日の光にさらされたミミズみたいだった。

「悩んでいるみたいだな。
 蜻蛉が悩むとこうなるのか。 初めて見る」
「うう、 ふにゃあ、 今度ばかりは、
 『行き当たりばったり』と『出たとこ勝負』じゃ なんともならない気がするんだ。
 うにゃ」

 相当参っているらしい。
 情けない呻き声が 言葉の合間に漏れる。
 桜は 放っておくことにした。
 八尺も、 我関せずとばかりに いつもどおりだ。
 最悪、 蜻蛉が負けても、 世界が救われるだけだ。
 問題ない。

「俺も その二つは大好きだな」
 八尺の のんきな声を聞いて、 蜻蛉が がばっと起き上がった。
 何か思いついたのだろう。
 すがるように八尺を見る瞳が ランランと輝いている。
「そうだ!  八尺のおっちゃんが 代理人として闘うってのは駄目か?」

 八尺は 顎に手を当ててしばらく考えていたが、
「こっちが代理人ということは、 向こうも代理人で良いってことだよな。
 そうじゃなきゃ不公平だし。
 若い方なら勝てると思うが、 爺さんが出てきたら無理だぞ。
 ありゃ相当強い。 多分 その道の専門家だ。
 俺が負ける」
 さして残念そうでもなく 首を横に振る。

「駄目かあ」
 蜻蛉がばったり倒れて、 再びクネクネし始めたところに、 農家の主がやってきた。
 よく日に焼けた 気の良さそうな初老の男である。
「ほい、 無理やり泊まりに来た旅人てのは、 おまえ様方かい。
 この近くに宿屋は無いし、 いいよ。
 女の人じゃあ 野宿というわけにもいくまい。
 ほい、 飯の支度が出来た。 食べに来なさい」

 泊り客があるとは思っていなかっただろう。
 食事は質素だった。
 それでも 野菜は採りたてなので美味い。
 それなのに 珍しく食の進まない蜻蛉である。

「ほい、 娘さん。
 たんと食べないと 出るとこも出てこないよ」
 主に勧められても、 お代わりもしなかった。

 蜻蛉の場合、 たんと食べても 一向に出るところが出てこないのだが、
 反論もしないところを見ると、 それどころではないようだった。



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