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赤瑪瑙奇譚 第二章――7



「助けて」
 イヒカは、 覆面の人物の背後に隠れて 気づいた。
 女だ。 もう 駄目だ。

 が、 意外にも 悠々とイヒカをかばう。
 もちろん ユキアだ。
「大の男が 二人がかりで 、子どもをいじめちゃ 駄目じゃないの」

 呑気な口調を 吹き飛ばすかのように、 男の一人が 詰め寄る。
「おまえ、 何者だ」
「通りすがりの者よ」
「へっ、 よりにもよって こんな場所を通りすがるとはな。 何が目当てだ」
 男の顔には、 不信感しか 浮かんでいない。

「砦跡を見に来たの」
「ほほう、 ここは立ち入り禁止だ。 入った奴は お仕置きしなくちゃ ならねえな」
「聞いてないわ」
「うるせえ!  どうでも入るというなら、 おまえも一緒に たたき斬る」
「立ち入り禁止に反したくらいで 斬るの?  穏やかじゃないわね。 あなたたち 変よ」

「やかましい!」
 言って、 本当に 剣を抜いて 跳びかかってきた。

 イヒカは、 目を疑った。
 ユキアの剣が一閃して、 男たちの帯が 切り離された。
 筒袴が 落ちる。
 ユキアは イヒカの手を引いて 走り出した。
 追いかけようとした男たちが、 ずり落ちた筒袴に 足を取られ、 続けざまに 転ぶ音がした。

 ユキアとイヒカは、 地面の窪みに 身を潜めて 様子を伺った。
 あきれたことに、 男たちは片手で腰をつかみ、 片手に 抜き身を持ったまま、 しつこく追いかけてくる。
 必死の形相だ。

 イヒカは 祈った。
 死んだ両親、 神様、 仏様、 思いつく限りのもの全てに すがって祈った。
 ユキアの胸に下がっている赤い石が ぼうっと光る。 イヒカの懐が ほんのりと暖かくなった。
 あたりに 不思議な気配が漂い、 一陣の つむじ風が走る。

 反対側の茂みが、 まるで 誰かが動いているかのように、 ざわざわと揺れていた。
 追っ手は 茂みに向かって 遠ざかった。

 イヒカが 懐に手を入れて 探り、 暖かいものを取り出してみると、
 砦で拾った 飴玉みたいな 石だった。
「あら、 琥珀(こはく)。 随分良いものを持っているのね。
 それを狙っていたのかしら。 もしかして 盗んだ?」
 イヒカは 一所懸命 首を横に振る。
 どんなにお腹が空いても、 食べ物以外の物を 盗んだことは まだ無い。

「拾った。 ……なあ、 すごい剣さばきに見えたけど、 それでも あいつらには かなわないのか」
「そんなことは無いけど、 事情が分からないから。
 うっかり殺しちゃったけど 間違いでしたごめんなさい、という訳にもいかないでしょ。
 何があったのか、 ちゃんと説明するのよ。
 そうしたら 親御さんのところに 送っていってあげる」

「説明はする。 おばちゃん良い人みたいだし。 でも、 家族は死んで、 もう誰もいない」
「お、 おばちゃん?」


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コメント
60: by ポール・ブリッツ on 2012/05/09 at 19:14:42 (コメント編集)

琥珀ですか。

利権の危険なにおいがしますなあ(^^)

山吹色ならぬ琥珀色(^^)

62:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/05/09 at 23:15:18 (コメント編集)

> 利権の危険なにおいがしますなあ(^^)
もしもし ファンタジーですよ。

ここは、どしてもファンタジーにしてください。
越後屋は出てきませんからね。

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