RSS

蜻蛉の願いはキンキラキン 第十章――7


「最初に聞いたときは、 こりゃ無理だと思ったが、
 あんたなら 世界を救えるかもしれない。
 ガンバレや。 少なくとも 俺らは助かった」
 石屋は 冗談でもない口ぶりで言った。

「なあ、 あの櫓、 よく出来ているから真似して作っても良いだろうか」
「もちろんかまいません。 役に立って僕も嬉しいです」
 ちょっぴり自信がついた星白は、 にっこり笑った。

「また世界を救いに旅立つんだろうが、 この先に草原があってな。
 この辺じゃあ 紅焔(べにほむろ)草と呼んでいる草が生えている。
 今の季節は 一際 真っ赤になって そりゃあきれいなんだ。
 通りすがりに見物しちゃあどうだ。
 宝珠とやらの赤い色が 紅焔草みたいで好きだった。
 くれてやるのはちょっと寂しいが、 約束だ。 ほら、 持っていけ」

「ありがとうございますう。
 あのう、 これ、 贋物ですけど、 よかったら置いていきます」
「贋物もきれいじゃねえか。 くれ。 じゃあ達者でな。 がんばれよ」 

 石屋一家に見送られて 星白と一郎は、 石切村を旅立った。


 勧められるままに 赤く染まる小高い丘に登ってみた。
 一面に生い茂る 草の一本一本は、 赤い色をしている他に 何の変哲も無い草だが、
 一面に生え揃って 風に吹かれる様は、 まるで 炎が燃えているように美しい。
「こりゃあ きれいだ」
 一郎が感心し、 二人並んで しばらく眺めていた。

「星白、 確かにきれいだが、 いつまでも眺めて突っ立っているわけにもいくまい。
 次は何処へ行くのだ」
「…………………… 分からない。
 どうしよう。
 ………… 僕は何処に行けば良いのか分からない。
 うわあああ、 どうしよう」

 白、 紫、 青、 そして赤。 星白が持っているのはまだ四つだ。
 半分にしかなっていない。
 それなのに 行くあてが分からない。
 導かれている感じが 全くしない。
 どうなってしまったのだろう と混乱していた。

「星白、 落ち着け。 背筋を伸ばせ。 ゆっくり息を吐くんだ」
 一郎に恫喝され、 一瞬 怯えたものの、 星白は落ち着こうとして従った。

「ゆっくり呼吸を整えろ。 そうして、 己を無にするんだ。
 余計なことは考えるな。
 空っぽになって あるがままの存在に返れ。 おまえは無になれ」

 静かだった。
 気ままな風が 不規則な流れを作って通り過ぎ、 紅焔草が揺れる。
 真っ赤な炎が ゆらゆら踊る。
 赤く染まった 夢幻の世界だった。

「あっ、 近づいてきます。 とってもかすかな気配ですが、 宝珠みたいだ」

 ゆれる炎を踏み分けて、
 四弦琴を背負った ぼさぼさ頭のそばかす顔と、
 頭巾で顔を覆った 黒ずくめの魔法使いのような姿が現れた。
 少し離れて、 嬉しそうに景色を眺めながらついてくる男の姿も見え始める。

「…… 蜻蛉…… さ…… ん。 やはり、 あなたなのですね」
 星白に気づいた蜻蛉が、 にやりと不敵に笑った。



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア