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犬派のねこまんま 25である     byねこじゃらし

<期間限定長距離走者>


 犬はよろこび  庭 かけまわり

 有名な 歌の文句である。
 吾輩は 犬派ではあるが、 犬ではないから、
 雪の降る寒い日には、 暖かい場所で 丸くなっていたいものだ。

 しかし、 これでも 子どもの頃は、 風の子だったこともある。
 北風をものともせずに、 走ったものさ。
 さらに、 一時期、 長距離走が ほどほどに得意だったこともあるのだ。
 我ながら 不思議だ。
 なぜならば、 短距離走は めちゃめちゃ遅いのだ。
 だいたいにおいて、 運動能力が高い人間は 、短距離走が得意なことが多い。
 本来、 吾輩の運動能力は高くないものと思われる。

 その 謎の秘密 を打ち明けよう。
 毎日 朝晩 、飼い犬のロクを 散歩させていたからに違いない。

 小学五年生になろうとしていた ある晩、
 帰宅した父が 「ほら、お土産だ」 と取り出したのが、 真っ白い子犬だった。
 吾輩と妹が、 単純に可愛いと喜んでいる間に、 父が さっさと命名してしまった。
 ロク。 吾輩が幼い頃に、 アイドルの座を争った 黒猫の名前と同じだ。
 手抜きであることは 間違いない。

 ロクは 元気に育った。
 小さいながら 庭があったので、 鎖に繋がず、 ピョンピョン走りながら、 元気に育った。
 犬は散歩が命 だから、 という父の指示に従って、 毎日 散歩に連れ出した。

 首輪に引き綱を付けて出かけるのだが、 ロクは すぐに走りたがった。
 引き綱を ぐいぐい引くのである。 首輪が首に食い込むようで 気になった。
 苦しくないのだろうか。 人間なら、 首が締まれば苦しい。
 犬も、 もしかしたら 苦しいかもしれない。 アホな子供 であった。
 だから、 少しでも苦しくないように、 吾輩も 一緒になって走った。
 散歩というより、 散走である。 アホだ。

 社宅が空いたという理由で、 同じ市内に 引っ越すことになった。
 二階建ての六軒が繋がった棟割り長屋のような建物で、庭は少し小さくなった。
 新しい町でも、 ご町内を走った。
 ロクのほうが 先に大人になり、 先に賢くなった。
 吾輩が付いて行けるスピードに 合わせてくれるようになった。


 妹や母が散歩させる時は、 ちゃんと散歩になっていたらしいが、
 吾輩は それさえ気づかず、 走り続けた。
 ロクは 飼い主に似ず賢かったから、 吾輩がぎりぎりついて行けるスピードで走る。
 知らないうちに 、吾輩は 少しずつ速くなっていたらしい。

 六年生になって、 マラソン大会が催された時、 男女混合で、 たいそうな人数で走った。
 吾輩は ゴール直前で、 ずり落ちてきた靴下をのんびりと上げているうちに 何人にも抜かれ、
 先生に呆れられ、 「ゴールしてからにしなさい」 と注意されるという アホな行為をした。
 順位を書いた紙を渡されて 教室に戻ると、 「一番になったのはいるか?」と先生が聞いた。
 残念ながら、 我がクラスには居なかった。
 「二番は?  三番はいるか?」と続けていき、 吾輩の着順が呼ばれた時に 手を上げれば、
 先生もクラスメイトも 驚いた。
 普段 素早い訳でもなく、 体育も得意とは言いかねる子だったから、 その反応は 当然だったのだろうが、
 驚かれた吾輩も 驚いた。
 どんだけ のろま だと思われていたんだ。
 その評価に、 少しばかり ショック を受けた。
 ショックを受ける方が間違いだと、 今なら分かる。


 中学に上がると、 マラソン大会は 冬の恒例行事だった。
 他の子と競うつもりが ハナからない吾輩は、 ロクと散歩する時のペースで走った。
 その頃になると、 誰からも期待されていない ことを、 うすうす知っていた。

 ゴールの校門まで あと少しの地点で、 周りに人がいなくなったが 心配はしなかった。
 ビリではないと思ったが、 たとえビリでも かまわなかった。
 一般道路がコースだから、 何人かの先生が 見回りに来る。
 ちょうど 我が担任が 自転車に乗って来た。
 開口一番、 のたまわった。
 「おい、 ねこじゃらし。 おまえ なんでこんな所に居るんだ? 
 近道したんじゃないだろうな」

 ひどい。

 ゴールしてみて判ったのだが、 吾輩は トップグループの すぐ後に迫っていたらしい。
 コースが、もう少し長かったら、追い抜いていたかもしれない。
 先生が驚くはずだ。 これは、 自分でも驚いた。

 ただし、 全て ロク のおかげだ。
 ロクと散歩していた 期間限定の奇跡 みたいなものだった。

 気づけば、 今は ただのどんくさい女である。 残念。



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コメント
1082: by lime on 2013/01/31 at 18:05:18 (コメント編集)

マラソン大会。
ありましたねえ。小、中、高と、ありました。
走るのが苦手だった私には、ひたすら苦痛でした。
でも、猫じゃらしさんは、ロクのおかげで期間限定の好成績を残せたのですね。幸せなことです。
人間鍛えれば、伸びるのだという証明で。

持久力、運動神経は、やっぱりあるに越したことはないですね。
けっこう高齢なコロコロしたおばちゃんが、自転車で華麗にツーツー乗り(わかる?)をしてるのを見たとき、ちょっと羨ましくなります。

1083:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/01/31 at 18:24:42 (コメント編集)

「ツーツー乗り」が分からなくて、ググってみました。
「おばちゃん乗り」ともいうらしいですよ~

年配の人のほうが得意な傾向にあるらしいです。
見た事はありますが、そういう言い方があるのを知りませんでした。

ひとつ賢くなりました。
脳みそを鍛えなくちゃと思う今日この頃……。

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