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蜻蛉の願いはキンキラキン 第九章――6



 蜻蛉の ざっくりした説明を どういうわけか あっさり了解して、
 軽彦の兄が 扉を叩きながら船室に向かって声をあげた。

 が、 なかなか音沙汰が無い。
 居ないのかと半ば諦めかけたとき、 扉が細く開いて 男が顔を覗かせた。
 一見、 強面(こわもて)の役人風である。
 蜻蛉は、 かまわず 部屋の中に押し入った。

「何者だ。 我らを痲本呂婆からの使者と知っての狼藉(ろうぜき)か」
 奥に居た初老の男が 眉をひそめ、 偉そうに声を張った。
「知らない」
 もちろん、 蜻蛉はそんな事は知らないから、 その通りに返事をした。

「そういう事だ。 さっさと出て行け!」
 はじめに戸口に現われた強面が、
 むざむざ船室に踏み込ませた失態を取り戻そうと、 怒鳴りながら近づく。
 しかし、 蜻蛉は気にしなかった。
 ずんずんと奥に進んで、 偉そうな男を押しのけようとした。
「何をする!  他人の船室に勝手に押し入って、 勝手な真似をするな」
 男の言い分は もっともである。

「お嬢ちゃん 、怪我しないうちに出て行きな」
 陰になっていた奥から、 もう一人 下駄顔の男が出てきて、 睨むように凄んできた。
「盗んだものを返してもらいに来た。 さっさと出しやがれ」
 蜻蛉は、 悪そうな顔で 詰め寄った。

 背負った四弦琴が 妙に雰囲気を盛り上げる。
 前から見ると、 弦巻から突き出た変わった形の出っ張りが、 剣を背負っているようにも見えた。
 棚に載せてある荷物に近寄る。

「このやろう、 触るんじゃねえ!」
 強面男が 顔色を変えて跳びかかってきた。

 軽彦が 蜻蛉の手首をつかんで引っ張る。
 すれすれのところを 刃物がすり抜けた。
 軽彦が 突き出された匕首を叩き落し、 強面男を投げ飛ばした。
 その隙に 剣で切りかかろうとした下駄顔の男は、
 軽彦の兄が跳び付き、 腕をつかんで投げた上、 腹を打って昏倒させた。
 その動きの素早いこと、 つむじ風のようだ。

「馬鹿め、 じたばたせずに観念しろ」
 何もしていない蜻蛉が、 体勢を立てなおして 偉そうに嘯(うそぶ)いた。

 荷物を取り、 たいそう丁寧に飾り立てられた包みを開け、 さかさまにぶちまければ、
 色とりどりの財布が ぱらぱらと落ちる。
「あった!」
 宝珠の入った袋と 中身の少ない自分の財布を見つけて 取り戻す。

「うわあ、 僕の財布もある。 本当だ、 こいつらが犯人だったんだ。
こんなにたくさん財布があるってことは、 他にも盗られた人たちがいっぱいいるんだね。
返してあげなくちゃ。 船員さんに知らせてくる」
 軽彦が嬉しそうに 船室を走り出て行った。

「うむ、 なかなかの特殊能力だ」
 軽彦の兄は、 いまさらながら気づいて 感心することしきりだ。

「ふっ、 まあね」
 蜻蛉は 前髪をはらりと掻き揚げて、 不敵に笑ってみせる。
 すっかり その気だ。



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