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蜻蛉の願いはキンキラキン 第九章――5



「ああ――っ、 大入道!!!」
 突如 桜が大声をあげて、彼方を指差した。

「ええっ?  ど、 何処ですか」
 船員は 驚いて指差された方向を、 及び腰で睨んだ。
「…………………… 雲」
「えっ?」
「だから、 大きい入道雲だ。 あんなに見事な雲は 初めて見た」
「…… う……、 そうですか。 普通の入道雲にしか見えませんが」

 もちろん、 その隙に 蜻蛉が上甲板に上がり、 宝珠のありかを目指す。
 めったに発動することがないが、 お得意の連携技だ。

 蜻蛉がうろついていると、 目の前に 不審な顔で見つめる男の子が立ち止まった。
 蜻蛉よりも少し背が高いが、 ほっそりとして まだ男くさくない様子は 青年というより少年だ。
 可愛らしいと言って良い。

 蜻蛉は とっさに 不注意な一言を発した。
「あんた、 泥棒?」
「いや、 違う。 君は泥棒?」
「あたしも違う。 大事なものを盗まれた。 探しているところだ」
「じゃあ、 僕と同じだ」
 間抜けな会話が成立した。

 蜻蛉が ことの経緯を説明すると、 少年も 自身に起こった事を話し出した。
 船酔いしそうになり、
 風に当たろうと甲板に出たが、 耐え切れず 倒れ込んでしまったらしい。
 介抱を装って近づいた男に、 やっぱり財布をやられたという。
「うーん、 船酔いというのは 馬鹿にできないな」
「同感だ。 油断した」

 同病相哀れんでいるところに、反対側から若い男が来た。
 野生を思わせる精悍な二枚目で、 こちらは 少し年上だ。
「軽彦、 どうした」
 鋭い目つきで問いかけてくる。
 格好いい。
 こういうのもありかな、 なんてことを暢気に考えてしまう蜻蛉だった。

「兄さん、 この人も被害者です。 大事なものを盗られたって」
 紹介された蜻蛉は、 すかさず指を指す。
「あっちだ」
 軽彦が動いて 立つ位置が変わった為、
 その先にあるのは 閉じた扉になった。
 一等船室の中でも一番上等な個室である。
 きっぱりと迷いの無い指先を見た二人は、 互いに顔を見合わせた。

「心当たりがあるのか」
 兄のほうが 鋭い目つきをそのままに 聞いた。
「大有りだ。 盗られた大事なものが あたしを呼んでいるのさ」
 悪漢風にきめてみた。

「本当に 確かなんだろうな」
「うん、 盗まれたものが その中にあることが、 あたしには分かる」
 兄弟の身体に緊張が走る。
「それだけはっきりと言うからには、 確かめてみるだけでもやってみよう」




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