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蜻蛉ん願いはキンキラキン 第九章――4



「船に乗るまでは確かにあったんだろうな。
 はしゃいで 海に落したりしていないだろうな」

「間違いなく ここに来るまであった。
 四つあると重いから 無くなれば気がつく。 盗まれたんだ。
 ゲロゲロしていた時 背中を擦ってくれた人がいて、 親切な人だと思ってたが、
 きっとあいつだ」
 二人の騒ぎが聞こえたのか、 他の乗客も 自分の荷物を確かめたようだ。

「あっ、 財布が無い!」
 という声が 他のあちこちから聞こえてきた。
 どうやら 蜻蛉と同じく船酔いしていた連中だ。
 あの時、 三等船室の入り口は 開けっ放しになっており、
 臭いから逃げていった人と 夕陽を眺めにいった人が 甲板に上がって、
 残っていたのは 大半が 船酔いに苦しんで転がっていた連中ばかりだ。
「夕陽がきれいだぞ」という声は、
 誘い出す為に 泥棒が発したものだったのかもしれない。
 入れ違いに降りていった人間がいたことを 桜は思い出したが、
 どんな奴だったのかは 覚えていなかった。

 桜は 小声になって 蜻蛉に聞いた。
「あのお札は星白との縁切り札だ。 おまえには関係ない。
 何処にあるのかは分かるな」
「うん、 近い。 船の中だ」
 蜻蛉は ゆっくり 天井に向かって指を指した。

 その間も 他の被害者たちは騒いでおり、 怒りに満ちた声が続いていた。
「くそっ、 船長に言って 捕まえてもらおう」
「そうだ、 逃げる場所は無い。 船に乗っているはずだ」
「案外馬鹿な泥棒だ。
 持ち物を調べればすぐに犯人が判る。 捕まえて取り返そう」
 ぞろぞろと船室を出て行く。

「よし。 あたしが手っ取り早く捕まえてやる」
「相手は犯罪者だ。 おまえ一人じゃ危ないぞ」
「大丈夫…… だと思う。 茶色の宝珠に 旅の安全をお願いしてある。
 ……ええと、 身の安全を守る術を即効で頼んだ」
 はて、 宝珠はどうやって 身の安全を守ってくれているのだろう と考えている桜をよそに、
 蜻蛉は 四弦琴を背中に担ぐ。
 役に立つとは思えなかったが、 何も無いよりは心強い。
 いざとなったら 殴るくらいは出るだろう。

 二人は船底を出て、
 船長のところに向かう他の被害者たちとは 別行動をとった。
 迷い無く進む蜻蛉は、 上甲板に上る階段に行き着いた。
〈一等・二等乗船券をお持ちでない方は、 立ち入りをご遠慮ください〉 という看板があり、
 行く手を塞ぐように 一本の縄が張り渡してある。

 蜻蛉は 無遠慮に綱をまたごうとしたが、 通りかかった船員に注意されてしまった。
「すいません。 そこ、 勝手にまたがないようにお願いします」
 言葉は丁寧だが、 有無を言わさぬ調子で 立ちふさがった。

「ああ――っ、 大入道!!!」
 突如 桜が 大声をあげて 彼方を指差した。



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