RSS

蜻蛉の願いはキンキラキン 第九章――3



 蜻蛉は まだぐったりと転がっていた。
 まるで トドの昼寝だ。

 桜は、 せっかくだからと甲板に出てみることにした。
 入れ替わりに 船室に戻る人がいる。
 真新しい白い帆と船体も 夕陽の色に染められ、
 風を切って 勢いよく進む船上から眺める風景は 見事だった。
 水平線に口付けをする真っ赤な夕陽が、 空一面に炎の色を撒き散らし、
 遠ざかる陸地も 橙色に輝いて別世界のように見える。

「あれ?  夕陽に向かっているようだが、 これで良いのか? 
 蜻蛉羽(あきつば)王国は、 東じゃなかったっけ」
 桜は一抹の不安を覚えたが、 大海原のど真ん中である。
 どうしようもない。
 さすがに 桜は「太陽の馬鹿やろう!」とは叫ばなかった。

 しばらくして 船室に戻ってみると、 みんな落ち着いてきたようで、
「全部吐いちゃったら、 少し楽になってきた」
「船が動き出したら、 楽になりましたね。
 停泊している時の揺れ方のほうが 気持ち悪かったです」
「いやあ、 どうなることかと思ったけど、 大丈夫みたいだ」
 被害者たちが復活し始めていた。
 くねくねとのたうち悶えているのは、 残るところ蜻蛉一人だ。

「あっ、 いかん。 蜻蛉にまじないを掛け忘れた」
 あわてて まじないをかける。
 しばらくして、 よほど疲れていたのか 蜻蛉はおとなしく眠り始めた。
 静かに船上の一夜が明けた。

 一等と二等の乗客には 食堂で食事が出るが、 三等は弁当が配られる。
 桜のまじないのお陰か、 ほぼ全員が 落ち着いて朝を迎えた。
 弁当を食べ終えて立ち上がった蜻蛉が、 けたたましい叫び声をあげた。

「ああああ――――っ、 無~い~」

「朝っぱらから やかましい。 いったい何事だ」
「無い、 アレが無い。
 たいして入ってなかったけど 財布も無いー。
 動こうとしたら やけに体が軽いし、 何でだろと思ったら アレが袋ごと無くなってた。
 ほうじゅ……んぐぶっ」
 桜が 口を塞いで睨みつけた。




戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
1074: by 彦星 on 2013/01/26 at 16:08:53

(*・д・)ノ*:゚★こんにちヮ☆・゚:*:゚
ご訪問頂きまして♪応援°・:,。★\(✪ฺܫ✪ฺ)♪ありがとう♪(✪ฺܫ✪ฺ)/★,。・:・°ございます。

私も船は弱いです。(*'‐'*) 笑^^
応援♪~ポチッ☆彡

1075:Re: 彦星様 by しのぶもじずり on 2013/01/26 at 17:18:56 (コメント編集)

いらっしゃいませ

船が弱い方に、こんな場面ですいません。
私は弱くはない方なので、平気で書いてしまいました。
船に弱い人が書いた方が、臨場感が出せたかもしれませんが、あまり臨場感を出し過ぎてもなんなので、
この辺で勘弁して下さい。
応援をありがとうございます。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア