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赤瑪瑙奇譚 第二章――6



 イヒカは 砦に潜り込んだ。

 村長から 危険だから入るな と釘を刺されていたが、 知ったことではない。
 腹が減っていた。
 両親は 戦で死んだ。

 村長は 悪い奴ではない。
 親を亡くした孤児たちに、 一日一回 わずかな量だが 食べ物をくれた。
 だが、 九歳の少年、 イヒカの身体には 到底足りない。
 今は 腹を満たすことしか念頭に無いが、 本人の意識していないところで 不安も渦巻いていた。

 一人ぽっち。

 無茶を承知で、 いや 、 無茶だからこそ 危険な場所に飛び込んででも、 飢えを満たせるものが無いか 探す。
 鉄くずでも 布切れでも、 たべものと交換できるものが 見つかれば 御の字だ。
 何度か火を掛けられた 砦の焦げ跡は、 板を打ち付けられて 塞がれてはいたが、
 戦が終わると 人気の無いまま打ち捨てられ、 風雨に晒されて 傷みがきていた。
 うっかりすると 踏み抜いて 怪我をする。
 だが、 するかもしれない怪我よりも、 毎日確実に苛(さいな)まれる空腹のほうが 怖かった。

 イヒカは かまわず突き進み、 まだ入ったことの無い場所を目指す。
 役に立ちそうも無い ガラクタを漁っていると、 鈍く光る 小さな物が 目に付いた。
 潜り込んで 手を伸ばして拾う。

「ちぇっ、 石ころか」
 捨てようとしたが、 半透明に光る 茶色の石がきれいで 気に入った。
 何気なく 懐に仕舞う。

 立ち上がろうとしかけた時、
 壊れかけた箱が積んである陰に、 厳重な 閂(かんぬき)が掛けられてある 扉が見えた。
 近づいて 重そうな閂に手をかけると、 滑らかに動く。
 最近 誰か開けたのだろうが、 イヒカは、 あれっ と思っただけで そこまでは気づかない。
 中を覗いて驚いた。

「誰だ!  出て来い!」
 突然 背後から響いた声に、 イヒカには、 出て行かない分別が残っていた。

 すばしこさを武器に、 狭いところをすり抜けて 出口へ急ぐ。
 屈強な男が二人、 恐ろしい顔で 追ってきた。
 危ないところを何度かかわし、 外にまろび出る。
 一目散に走って逃げようとするが、 男たちの足も速い。

 前方に 覆面の人物が、 立ち上がるのが見えた。 一か八かで 走り寄る。

「助けて!」


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