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クロウ日記 二

 マホロバ王国 ホヒコデ王の 第四王子として生を受けた クロウは、
 幼い頃から 紛れもなく 美少年だった。

 美少年が そのまま 美しい青年に育つ とは限らない。
 二十歳過ぎたら ただの野卑な阿呆面(あほうづら) ということも、 ままあることだ。

 しかし クロウの場合は、 長ずるに従い ますます美しさが際立ち、
 いっそ恐ろしい といえるまでに 成長した。
 空を飛ぶ鳥が、 クロウの美しさに 驚いて落ちた、 という 怪しげな噂さえ、
 まことしやかに 伝えられたほどだ。

 一方では、 どうにもならない 変人だという噂も 絶えなかった。
 常軌を逸した美しさは、 狂気を孕(はら)んでも 不思議はない、 と納得する者が 多かった。


 父親のホヒコデ王は、 そんな息子の、 時に奇矯な振る舞いを 面白がってさえいたが、
 世話をしなくてはならない召使たちには それどころではない。
 もてあまされて 次々と入れ替わったが、 当のクロウは 気にしなかった。
 というより、 むしろ 喜んだ。
 そうやって どんどん入れ替わり、
 いつかは 気に入る者が 近くに現れることを 待ち望んでいたが、
 なかなか うまくは運ばなかったようだ。
 相も変わらず、 召使は 入れ替わり続けた。

 年の離れた兄 のウナサカ皇太子は、 弟の振る舞いが 全く理解できずにいた。
 しかし、次々と寄せられてくる苦情を、困った顔で苦笑しながらも穏便に対処した。
 理解不能ながらも、 なぜか クロウが可愛かった。


 思春期に入った頃から
 実態のよく分からない、 というか、ほぼたいした実体の無い 団体の 名誉職につかされた。
 身分は れっきとした王族だし、 見栄えは すこぶる良いことから、
 はじめは 歓迎されたが、 団体側は すぐに 失敗を悟ることになる。
 その内のいくつかは 大胆な改革を 余儀なくされ、
 いくつかは 抵抗むなしく 解体されるにいたった。

 さすがに 何処からも お呼びが来なくなり始めた頃、
 長年 席を暖めていた中務(なかつかさ)卿が 退官する運びとなった。

 中務省は、 宮中の政務を 統括し、
 侍従の任免、 後宮の人事、 詔勅(しょうちょく)文案や 宣下(せんげ)・上表 などにかかわる部署だが、
 長官には 代々王族が就くことから、 有能な副官が 用意されており、
 中務卿の職は 王族の体裁を整える為に 利用されてきた 経緯がある。

 お飾りで 充分なのである。

 ホヒコデ王の弟である 前任の中務卿は、 体躯も堂々として 押し出しも良く、
 どちらかといえば小柄な王よりも 見た目は 立派だった上に、 難しいことは 何も考えない、
 周囲に すこぶる都合のよい人物 だったこともあって、 見事に お飾りの役目を 果たし終えた。


 クロウ 二十六歳。
 第二王子は病没し、 第三王子は 既に 自身の希望で太政官として 政務に寄与していた為、
 お鉢が回ってきたのだ。
 美しい若者というには 薹(とう)の立った年齢になっていたが、
 その美しさには、 さらに 凄みがましていた。
 飾りとしては 充分すぎる。

 問題は、 クロウの変人ぶり だった。
 だが 実質的に 中務省を取り仕切ってきた 次席の大輔ナユタは、
 特にあわてた様子も無く 受け入れた。
 いくらお飾りとはいえ、 国の中枢にある官位である。
 目に余るようなら、 正式な手順で 排斥が可能だ。
 ナユタは 有能な官吏であった。


 ところが、 いざ クロウが中務卿として 官位に就くと、
 周囲の危惧をよそに 案外まともな中務卿になった。
 就任の祝い にやってきた人々への挨拶も 立派にやってのけた。
 中務省が 管轄する部署を含めて、 主だった配下への就任の辞を 何事も無く 無難にこなし、
 最後に こう締めくくった。
「宮中の万事を取り仕切る部署なれば、 くれぐれも 不正の無きよう 心せよ」

 省内は 安堵に包まれた。
 噂ほどの変人 ではないようだ。
 大きな騒動さえ起こさなければ それで良い。
 どうせお飾りなら、 美しいほうが 楽しい。
 先の卿同様、 在席してくれるだけで、 気ままにやってもらっても 仕事には差し支えない。
 やれやれ。


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コメント
175: by LandM(才条 蓮) on 2012/06/17 at 22:11:31

あの織田信長もうつけで有名でしたけどね。
顔もカッコよいお人だったようで。
それと同じタイプなお人に見えますね。
クロウも。

176:Re: LandM(才条 蓮)様 by しのぶもじずり on 2012/06/17 at 22:30:54 (コメント編集)

ルックスは、信長より勝ってるところをイメージしてください。
ちなみに、クロウは天下を狙っていません。
そこは 信長のほうが ずっと大物です。

203: by ☆ ピッピ ☆ on 2012/06/25 at 15:10:52

大人になっても美しい男性として
頭に浮かんだのが韓国俳優の「イ・ジュンギ」ですぅ。
あの切れ長のおめめにノックアウトされましたぁ。

>美少年が そのまま 美しい青年に育つ とは限らない。
子供の頃のイ・ジュンギのお写真
ネットで1枚しか見たことがないケド
ちょっとぽっちゃりで
今の姿になるなんて程遠い雰囲気でした。
逆の場合もあるのだねぇ。

204:Re: ☆ピッピ☆様 by しのぶもじずり on 2012/06/25 at 15:42:12 (コメント編集)

> 逆の場合もあるのだねぇ。
あくまで個人の感想ですが、そのまま育つより、途中で変わるケースのほうが多い気がします。

「小さい頃は、可愛かったのにねえ」
親戚に会うたびに 言われている私です。
なんで こうなった。

1539:管理人のみ閲覧できます by on 2013/08/04 at 15:30:30

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