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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章――11



 お勝は さらに続けた。
「いくら言っても薬は飲まんかったで、
 わたしがこっそり 心臓に良い薬草を青汁に混ぜたったがや。
 毎日飲んどるで、 近頃は元気になっとったのに…… う、 うう」
 またもや泣き出すお勝。
 忙しい婆さんである。

「ほうかね。 お勝さんも青汁に入れとったがや。
 わしも ゆんべ思いついたで、 今日はこっそり入れたがや」
 村人の一人が、
 慰めるように、 うんうんとうなずきながら お勝の背をさすった。

 その二人の話を聞いていた村人の何人かが、 目を見開いた。
「誰も考えとることは同じだなも。
 おれもそうすりゃあええと思ったで、 薬草を煎じて ちょっと前に持ってきたがや。
 ほしたら誰もおれせんがや。
 仕方なく 卓(つくえ)の上の青汁に、 ちいっと入れといたがや」
「わたしもだがや。 誰もおれせんもんだで、 ちいっとだけ入れたがや」
「あっ、 わたいも」
「俺も。 煎じ薬を通りすがりに置いとこうと来たら、 誰もおれせんだったで、
 青汁を すこうし捨てて……」
 次々と名乗り出る村人たち。

「あなたも 青汁に入れたんですか?」
 星白の問いかけに、 男は元気にうなずいた。
「ほんだで、 ええ思いつきだと思ったがや。
 みんなもやっとらあしたとはなあ。
 死んどらんかったら、 今頃は元気になっとったかもしらん」
 いくらなんでも そんなに早くは効かない。

 そこにきて、 やっと ひよこ名探偵の出番が来た。
「死因は、 それですね。
 少しなら薬でも、 心臓に効く薬草は 量が多ければ猛毒です」
 星白は、 読んだばかりの『星白博士の万物考察記・第一巻』に書いてあったことを思い出した。
 せっかくの贈り物だからと、 律儀に読み始めていたのだ。
 まだ 一巻目の途中である。

 村人たちの ささやかな善意が、
 たまたま一時(いちどき)に集まって 村長を死に至らしめたのだ。
 一同は 呆然としてうなだれた。

 お勝が 盛大に泣き出した。
「わあぁーっ、 わたしが青汁から目を離したせいだがや」

 やがて、 泣き声を止めるように 別の声が上がった。
「たわけたこと言っとりゃーすな。 お勝さん一人のせいなんかであらせん」
「ほやほや、 わしらみんなのせいだがや」
「それと、 裏の祠で起きた 怪しい出来事のせいだわ」

 星白探偵の華麗な推理を待つまでもなく、 解決してしまった。
 残る謎は、 祠の怪のみ。




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