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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章――10



「今から探しに行っても、 間に合わせんわ。
 ここにおる人間で、 やり繰りしよまい。
 そこのよれよれの兄ちゃん。 あんたでええわ。 名探偵やってちょ」

 いきなり指名されて、 星白は 吃驚仰天した。
「何を言っているのか よく分かりませんが、
 ひょっとして、 ぼ、 僕が…… 名探偵?  にならなきゃいけないんですか? 
 やった事がないですぅ。 そんなこと」
 よれよれ具合に磨きがかかった。

「青汁に毒が入っとると言い出したのは、 あんただがね。 責任取りゃあせ」
 発見者の婆さんが、 ぴしりと断言した。
 星白は 口をパクパクするばかりで、 言い返せない。
「まずは 現場検証と事情聴取だな」
 一郎が追い打ちをかけた。

 嘴の黄色いひよこ名探偵が、 即席で誕生させられた。
 逃げ場を失った星白は、
 発見者の婆さんに向かって 恐る恐る口を開いた。
「あ、 あな、 あな…… あなたのお名前と、 発見した時の状況を話してください~」

「名前は、 お勝だがや。 村長に、 毎日青汁を作ってやっとったがや」
 お勝が 涙を押さえて答えた。
 青汁を用意して飲ませようとした時、 裏の祠のほうから 怪しい音が聞こえたので、
 村長と二人で見に行ったのだという。

 獣同士が戦っているような 唸り声もした。
 近づこうとはしてみたものの、 ただならぬ気配に足がすくんだ。
 猟師の権太を呼んできたほうが良いかもしれない。
 あたふたと相談しているうちに、 戦いが終わったようだった。

 再び近づこうとした時、 草履が片方飛んできた。
 見ると、 以前泥棒犬に盗まれた村長のものだった。
 次に鳥の骨が、 お勝の手ぬぐいが、 そして 見覚えのある村人のあれこれが飛んできた。
 どれも泥棒犬に盗られたものばかりだ。

 野良犬同士の喧嘩だったのかと、 村長は一足先に戻り、
 お勝は 飛んできたものを拾い集めて戻った。

 戻ってみれば、
 青汁は飲み干されており、 すでに村長は息をしていなかった。
 そういうことらしい。

「う~む、 裏の祠で何が起こっていたのか、 不思議ですう。
 盗まれた物が、 何故 飛んできたのでしょう」
 出来立てほやほやの名探偵は、 早くも行き詰った。

「ほや、 あんな騒ぎさえ無ければ、 村長は 出来立ての青汁を飲んどった。
 毒を入れる暇はなかったがや」
 お勝の嘆きは怒りに変わった。
 名探偵は 睨みつけられて、 おろおろするばかりであった。

 意味が分かっているのは 蜻蛉だけだ。



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<麻本呂婆国西南地方の 方言講座>

          やり繰りしよまい → やり繰りしましょうよ

          名探偵やってちょ → 名探偵になってくださいな

          あんただがね → あなたでしょ

          責任取りゃあせ → 責任をお取りあそばせ

          作ってやっとったがや → 作って差し上げていましたの

          ほや → そうですわ



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