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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章――6



「魚は せわしなく返しては駄目だ。
 片側が焼けるまでじっくりと待ち、 機を逃さずひっくり返して もう片側をじっくり焼くと、
 形も崩れず美味い。
『動かざること山の如し』大局を見据えて あわてない王様がいい。

 反対に、 餅はこまめに動かし、
 焼き加減を頻繁に見ながら せわしなく焼くと ふっくら出来る。
 腹を空かせて 早くありつきたい乞食に焼かせると ちょうどいい。
『根ものは水から、 葉ものは湯から』というのは、 そのまんま 野菜の加熱法だ」


「わあ、 基本そのニ、 食材によって 適切な加熱方法が違う、 ですね」
 桜は、 本当に基本の基本から教え始めた。
 さらに勢いを増し、薀蓄(うんちく)は続く。
 何時になったら食事が出来上がるのか見当もつかなくなった。



 一方蜻蛉は、 壮絶な死闘を演じていた。
 相手は、 さっきの黄色い野良犬である。
 木立に囲まれた 古い小さな祠(ほこら)の前、
 双方毛を逆立て、 歯をむき出して対峙していた。
 故郷の山で、 猪狩りに参加したしたことのある蜻蛉は、 実は 動物が相手なら得意だ。
 手ごろな木の枝を武器にしつらえて油断なく構え、気力で圧倒する。
 犬のほうも、蜻蛉のただならぬ闘志に警戒心を新たにした。

 こいつは素人じゃない、 と うかつには動けないでいる犬だった。
 だが、 蜻蛉も負けるわけにはいかない。
 世界征服への道は この一戦の勝敗にかかっていた。
 戦いの場に、 木の葉を揺らす生暖かい風が通り過ぎる。

 その瞬間、 双方が動いた。



 桜おばあちゃんのお料理講座は、 総論から各論と実戦編へと移ったが、
 蜻蛉は帰ってこなかった。
「こら、 食材を切るときは 大きさを揃えろ。
 大きい小さいがあると、 火の通りと味にばらつきが出るだろう、 バカたれが!」
 桜先生の指導が 荒々しい口調に変わり、 食事の用意が着々と進んでも、
 まだ蜻蛉は帰ってこない。

「蜻蛉さんが心配です」
 ついに 星白が言い出した。
「放っておけ」
 内心では桜も心配していたが、 ここで邪魔をされたら作戦が水の泡だ。

「でも、 でもう、 蜻蛉さんがご飯に遅れるなんて、 ぜ~ったいにおかしいです。
 何かあったに決まっています」
 確かに 星白の言うとおりだった。



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