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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章――5



「桜さん、 えげつない」

「なあにを言っとる。 これくらいしないと また先を越されるぞ。
 星白たちは任せておけ」
 蜻蛉が出かけてしまうと、 桜は手ぐすねをひいた。
 男二人をこき使って 小屋の中を掃除させる。

 さっきのおばちゃんが、 言ったとおりに 米と野菜を持ってきた。
 調味料と卵なんかもある。
「少にやぁけど、 これで何とかしてくりゃぁせ。 安くしといたるがや」
 しっかり手を出した。
(金を取るんかい)
 桜は、 内心でぼやく。
 おばちゃんは甘くなかった。
 しかし、 小屋の中で 物のしまってある場所を教えてくれ、 近くの小川を教えてくれた。

 桜は、 一郎と星白に指示して小川に行く。
 鍋、釜、欠け茶碗と野菜を洗い、 米を研いだ。
「一郎君は、 水を小屋まで運んでおくように。 星白君はわたしの手伝いだ」
 まさか、 桜の魅力では無い。
 絶対に無い。
 宝珠のご利益で 星白は唯々諾々と桜に従った。


「蜻蛉さんの姿が見えないようですけど、 どうしたんでしょう」
 桜の傍を離れたくないのは何故だろう と訝(いぶか)しく思いながらも、
 蜻蛉が心配な星白だった。
「お使いに行かせた。 気にするな。 それより ジャガイモを剥け」
 星白は器用だった。
 刃物にも慣れている。 ジャガイモの皮を うすくきれいに剥いた。
「これでいいですか」

「ばか者。
 『りんごの皮は貧乏人に剥かせろ、 ジャガイモの皮は 金持ちに剥かせろ』
 というのを知らんのか」
「ごめんなさい、 知りませんでした。 どういう意味ですか」
 桜の怒鳴り声に怯えながらも、 理由を聞いてしまう星白だった。



「りんごは うすく剥いたほうが美味いし、栄養も損なわない。
 だから貧乏臭く薄く剥けということだ。
 ジャガイモの皮には毒がある。 けちけちしないで 厚くしっかり剥けということだ。
 特に芽には毒が多い。 『ジャガイモの芽は、目の敵にしろ』だ。 分かったか。

 いいか星白、
 人間が食べているものは 食料になるために在るわけではない。
 それぞれの都合で この世に生きている。
 それを 人間の体に合うようにするのが料理だ。

 適切に調理すれば、 毒のある河豚(ふぐ)も美味しい刺身になる。
 ほうれん草は 茹でて灰汁(あく)を抜けば、
 禿(はげ)になったり 腹の中にデキモノが出来たりしないですむ。
 でんぷんの多い栗や芋は 生で食べるとオデキが出来るが、
 熱を加えれば美味いし、 身体に良い食べ物になる。

 生で食べたほうがいいものと、 過熱しないといけないものがある。
 人間は、 刃物と火を使うことによって、 安全に食べられるものの範囲を広げてきたのだ。
 これが料理の基本 その一だ」



「はい。 基本その一、 食材の特性を知り、 人間の体に合うようにすること、 ですね。
 勉強になります。
 他にはないのですか。貧乏人のりんごと金持ちのジャガイモ みたいなのは」

「もちろんある。
『魚は王様に焼かせろ。 餅は乞食に焼かせろ』というのがあるな」
「その心は?」



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