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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章――2


 「おんなじ名前だね。 すごい すごい、 博士だって」

 客が少なくて 閑そうにしていた販売員が 声をかけてきた。
「それは百年くらい前の トンデモ本ですね。
 縁者の子孫が大金持ちの貴族で、 復刻して作らせた物なんですが、
 あんまりとんでもない内容なので 売れてません。
 ……しまった、 あ、 いや、 だから 持っている人が少ないので貴重ですよ」
 うっかりしているわりには、 しぶとい販売戦略で押してくる。

「どんなことが書いてあるの?」
「はじめのほうの巻は、 各種薬草の利用法、
 カビで病気を直す方法 なんかから始まって、 からくり仕掛けの自動走行車とか、
 百貫のものを 指一本で持ち上げるからくりとか、
 湯気を利用した動力機構とか……
 後の巻は 乾燥した季節の大敵 パチパチの作り方と取り出し方、
 太陽光の力の利用法、 果ては、 湯気の力と 光の力を パチパチに変換する方法とか、
 まあ、 奇妙奇天烈、 奇想天外、 なんじゃこりゃ的内容が盛りだくさんで、
 不思議な世界にご案内 風なことが書いてあります」

「読んだの?」
「ここ、 暇な職場ですから。
 もっともらしくて 抱腹絶倒ものでした。
 カビで病気を治すなんて、 あっはっはっは、 カビですよ~。 カビ」

「よし!  強盗から助けてもらったお礼に、 星白君に買ってあげよう。
 キンキラ女神像の御礼がたんまりあるし。
 これ、 全巻くださいな」
「こちらの方は 星白さんとおっしゃるんですか。
 それなら是非持ってなくちゃ。 毎度ありー」

 全十三巻は、 あまりに重かった。
 雨の季節だからと 販売員に油紙で包ませ、 星白の背中に括りつける。

 桜は内心、 旅の途中だというのに あんなに重い贈り物とは、
 恩人に対して なんて非道な事を と思ったが、
 二人とも嬉しそうなので、 あえて口を挟むのはやめた。

「蜻蛉、 あれは作戦か」
 人気のないところで 桜が耳打ちしてみた。
「えっ?  何のこと?」
 何も考えていなかった。


 都見物は続く。
 美術館、 宝石商、 両替屋、 豪邸と、 いつも通り 蜻蛉のお宝めぐりに突入した。
 律儀に付き合う星白は、 次第に息が上がっていく。

「すいません。 少し休憩してもいいですか」
 ついに根を上げた時、 ちょうど一時の晴れ間が見えた。
 折り良く目の前にあった 広い公園の濡れていない場所に 腰を下ろした。



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