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蜻蛉の願いはキンキラキン 第八章 黄色い犬――1



 星白が 次にビシッと指差したのは、 麻本呂婆王国の南西。
 もちろん、 蜻蛉と桜も もれなく付いて行くつもりだ。

 情熱を傾けた穴掘りの疲れを癒すために、 一日休んで出発しようとしている時に、
 ちょっとした事件がおきた。
 球根泥棒が出た。

 畑をほじっているところを、 蜻蛉が そうとは知らずに声をかけ、
 あせった泥棒は、 居直り球根強盗に変じた。
 刃物を振り回して暴れる強盗を、 駆けつけた一郎と星白が取り押さえた。
 なにを隠そう、 一郎は知る人ぞ知る剣豪だったのだ。
 ひとたび一郎が剣を振るえば、 田舎の強盗などひとたまりもない。
 一撃必殺の豪快な剣ではないが、 確実な ひっとあんどらん だということが判明した。
 おじいちゃん子の星白もそこそこ強い。

 結局、 あまり休みにはならなかったな とぼやきながらも、 出発することにした時、
 行く先を聞いた田吾作が、 王都于鉧(うけら)に行く乗合馬車を勧めた。
 馬車の出る近くの町まで行き、 馬車を使うことにした。



 于鉧は、 町の大きさといい、 賑やかさといい、 洗練された雰囲気といい、
 虚空の都とは比べ物にならない 大きな都だった。
 古い建物も 新しい建物も 落ち着いた調和を保ち、
 大通りの並木は小雨に濡れて、 優しい緑を提供している。
 そんな季節でも多くの人々が街中を行き交い、活気があるのが分かる。
 四人の田舎者たちは、せっかくだからと見物することにした。

 蜻蛉が行きたがったのは、 またもや博物館。
「蜻蛉、 『世界の秘宝展』はやっていないが、 それでも見るのか」
 桜が不思議そうだ。
「わあ、 博物館!  いいですね。 僕も見たいです」
 星白は、 その話に乗った。
 球根泥棒の暴挙から助けてもらって以来、 蜻蛉は以前にも増して 星白に愛想が良くなった。
 星白も、 不憫な子ほど可愛いと思うのか、 何かと気にかけるようになっている。

 桜は、 縁切り札の効力が衰えたのかもしれない とまじないを掛けなおしたが、
 変わらないところを見ると、 宝珠は関係ないらしい。

 星白は 熱心に閲覧し、 楽しそうだったが、
 言い出しっぺの蜻蛉は、 すぐに興味をなくしてしまった。
「古臭いものばっかだ。 意味分かんないし、 つまんない」
「じゃあ何で入ったのだ。 こっちこそ意味分からんわ」
 同じく、 あまり興味のない桜が 文句を言った。

「ん~なんでだろ。 …… 星白君と逢い引き? 
 あたしたちって、 だんだんいい感じになってきてるだろ。
 ようやく あたしの魅力に気がついたかも」
「ふん、 好きにほざいていろ」

 そんな蜻蛉が俄然元気になったのは、 出口付近にあった「おみやげ物販売処」だった。
「星白く~ん。 来て来て、 ほら」
 怪しい猫なで声で 呼び寄せて指差したのは、
 隅の目立たない場所に ひっそりと置かれていた
 『星白博士の万物考察記』全十三巻だった。



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