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蜻蛉の願いはキンキラキン 第七章――7



「ここです」
 きっぱり言って 星白が立ち止まったのは、
 土嚢を積んだ場所とは宿をはさんで反対側になる 上流の土手だ。

 勢いの衰えない濁流が近い。
 ドスッ  狙いを定めて鍬を突き立てた。
 先ほどの手伝いのおかげか、 腰つきが決まっている。
 一心不乱に穴を掘る星白だった。

 その脇には 程よく茂った茂みが在ったりする。
 静かであれば、 その陰から 星白とは別に穴を掘る音が聞こえるはずだが、
 増水した川の轟音が、 一切の物音を飲み込んで かき消していた。
 故に、 互いに気づかぬまま、 不審な二組は穴を掘っていた。


 ――やがて――
「あった!」
 異口同音の叫びが上がった。

 一郎が、 孫とは違う声に さすがに気づき、 茂みに目をやる。
 近づいて、 枝や葉の隙間から覗き、
 反対側から覗く桜の目と 図らずも見つめ合った時、 孫たちが騒ぎ出した。

「うわあ、 なんかまずい事態かも」
「大変です!  水が、 水があ!」

 昨年、 大掛かりな補強工事をしたことによって 無事を保っていたが、
 本来なら 川が一番決壊しやすい危険な場所である。
 そこに、 大きく掘られた無残な穴に、 容赦なく水が染み出していた。
 川の流れが穴を手がかりに、 堅牢な土手を崩そうと襲い掛かっていた。
 村人が 夜明け前から総出で働いたことが、 すべて無駄になろうとしていた。

「緊急事態でござる!」
「何とかしなくちゃ、 誰か、 誰か助けてえ!」
「やばい!  やばすぎる!」

「この村を 水害から守りたまえ!」
 泥が付いたままの宝珠を高々と掲げ、 叫ぶ声が響いた。



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