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蜻蛉の願いはキンキラキン 第七章――5



「ここまでくれば、 しめたものだ。
 あたしにも分かる。 穴を掘りたくなってきた」

 夕食を済ませ、 部屋に入って二人きりになったところで、
 蜻蛉が桜に耳打ちをした。
 そんなことをしなくても、 部屋には二人しかいない。

「やっと 己の身を恥じる気になったか」
 桜のツッコミもなんのその、 蜻蛉は にやりと不適な笑みを浮かべる。
「どうやらお宝は地面の下だ。 掘って、 掘って、 掘りまくるぞ」
 勇ましく腕まくりをして見せる蜻蛉に、
「早く寝よう。 夜明け前に出かけて、 星白たちの先回りだ」
 と言って 、布団に引きずり倒す。


 夜明けには、 まだ少し間があると言うのに、 桜は 異様な音で目が覚めた。
 それでなくとも、 年寄りの朝は早い。
 轟々と水の流れる音がしていた。

 様子を見ようと、 窓に向かい、
 途中に寝ていた蜻蛉を踏みつけてしまった。
「ふんぎゃあ!」
 断末魔の猫のような声を出して、 蜻蛉も目を覚ました。
 戸外で騒ぐ人の声も聞こえる。 ただ事では無さそうだ。

 窓を開けると、 音がさらに大きくなる。
 村を流れる川が 暴れ狂ってあげる雄叫(おたけ)びだ。
 点在する家々に 次々と明かりが灯るが、 夜明け前の深い闇に沈んで、
 激しい音以外に 川の様子をうかがい知ることは出来ない。
 それが 返って不安を掻き立てる。

 桜は 闇の中に手を差し伸べた。
 暗くて見えないが、 手に当たるしずくから、 小雨が降っているのが分かった。
「ふむ、 上流の山に大雨が降っているのだろう。 川が危ないな」

 奥から戸が開く音がして、 階段を降りる乱れた足音が聞こえた。
 桜と蜻蛉も着替えて、 二階にある宿泊室から 階下の様子を見に降りた。
 足音は、 星白と一郎、 そして黒ずくめの男のものだった。
 やはり 様子を見ようと出てきたものらしい。

「川があふれそうだ。 土嚢(どのう)を積むから 男衆は出てきてくれ」
 転がり込んできた村人が叫ぶ。
 宿の番頭と下働きの男が すでに身支度を済ませ、
 鍬などを持ち出して準備をしていた。



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