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蜻蛉の願いはキンキラキン 第七章――4


「いやあ、 四名様でござりすか。
 広い部屋が無えだども、 別々になってもよかっぺか」
「二人ずつがいい。 我々は たまたま同行しているだけだからな」
 桜の返事に番頭はうなずいて、 宿帳を出した。

「んだば、 これに住所と名前を書いてけれ。
 こんな時期に来なさるとは、 お客さん方は 鬱金香目当てではなかっぺ。
 何さしにけらした? 
 いやね、 球根泥棒が出たことがあって、 警邏隊から 用向きを聞くように言われているもんだで。
 もっとも、 泥棒が自分で泥棒だと言うわげ無え。
 無駄なこったが、 一応規則だから お願えしますだ」

 番頭の言葉に気を悪くすることもなく、 星白は胸を張って堂々と答えた。
「私は 世界を救う為の旅をしています。
 此処へは その途中で立ち寄りました」
 番頭は 口をあけて返答に困っていた。

 仕方なく 蜻蛉が後を引き取る。
「あたしは、 世界を――――までは一緒だが、 その後がちょっと違う。
 実は……」
「あわわわ、 物見遊山の旅だ。 世界を物見遊山!」
 これ以上番頭を混乱させては可愛そうだと思った桜が、 何とか取り繕う。
 番頭も 理解可能な言葉に飛びついた。

「ああ、 物見遊山でがすか。 物見遊山だば春のほうがきれいだども……、
 いや、 贅沢(ぜいたく)言うつもりは無え。
 いつでも歓迎するだ。 物見遊山大賛成。
 去年と今年の春は 大騒ぎになったし、 今のほうが 静かでいいかもしんねえ」

「えっ、 大騒ぎって泥棒ですか」
「んでねえ。
 鬱金香の花は いろんな色があって、
 あか、 しろ、 きいろ、 どの花みてもきれいだな♪ 
 だども、 青と黒だけは無え。
 いんや、無がった。
 それが、 村一番の名人が 去年青い鬱金香を作って大騒ぎ。
 ところが今年は 青くなぐなって大騒ぎ。 全部まっ白。いやはや、 大変だった」

 帳場でおしゃべりをしているうちに、 とっぷりと日が暮れた。

「青が……消えたのか」
 いつの間に来たのか、 例の黒ずくめが宿の入り口に立って、
 ほとんど聞こえないほど かすかな声で呟いた。

「いらっしゃいませ。 今日はまた、 変わったお客さんばかり……
 あわわわ、 部屋はたんと空いているだで、 どんぞ、 泊まってけろ」
 黒ずくめの男は、 絵描きだと名乗った。



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コメント
1551: by LandM on 2013/08/10 at 09:36:48

確かにお花畑の花がごっそりなくなっていたら、すげえビビリますね。まあ、今回は一部ですが。そういう悪戯もやってみたい心情に駆られますが、やると捕まっちゃいますのでやめましょう。・・・というか主人公たちの方がやりそうな。

1552:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/08/10 at 10:00:57 (コメント編集)

すいません、分かり難かったですか。
花そのものが無くなったのではなく、珍しい青色が消えてしまった、
という状況を書きたかったのです。
書き方を工夫してみます。

いつもコメントをありがとうございます。参考になります。

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