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蜻蛉の願いはキンキラキン 第七章 青空色の鬱金香――1



「あら、 寄寓(きぐう)だわ。 星白さんじゃなくて。 お久しぶり。
 あたし蜻蛉よ。 覚えてる?」
 蜻蛉のわざとらしい愛想笑いを怪しみもせず、 星白は嬉しそうに笑った。

 どんよりとした曇り空の下、 かすかに生暖かい風が吹いている。
「うわあ、 蜻蛉さんだ。 また会えて すごく嬉しいですう」
 満面の笑みを浮かべた星白は、 蜻蛉を眺めた。

 くしゃくしゃの短い髪、 寝ぼけたような目、 そばかすの浮いたぺっちゃんこな鼻、
 どう見ても 平らな胸をはじめとする女らしさのかけらもない体、
 一通り眺めて 不思議そうに首をかしげた。
「あれっ?  僕、 いつの間に、 女性の好みが変わったんだろ」
 蜻蛉と桜は、 ちらりと目線を交わす。
 この分だと 星白はまだ気づいていないらしい。
「あたしも嬉しい。
 ここで会ったが百年目、 盲亀(もうき)の浮木(ふぼく)、 優曇華(うどんげ)の花」
「うわあ、 僕、 仇討(あだう)ちされちゃうんですか。
 身に覚えがないんですけど……」
 一気に怯える星白に、
 人差し指で頬をポリポリと掻きながら 首をかしげる蜻蛉。
 仇討ちの口上を言ってどうする。

「あれっ?  なんか間違った」
「大間違いだ、 ボケッ!  ちゃんと取り入…… いや、 仲良くしろ」
 桜に言われるまでもなく、 蜻蛉はそのつもりだ。

「星白さん、 何処に行くの?」
「はい、 あっちです!」
 星白は、 世界を救う勇者のごとく、 ビシッと指をさす。
 格好だけは勇ましい。
「またまた寄寓だわ。 あたしたちもあっちに行きたいの。
 でも、 か弱い女二人の旅は 何かと物騒でしょ。 ご一緒してもいいかしら」
 それは本当だった。

 八尺は、 画室として借りた隠居所の一室にこもって、 絵の仕上げに夢中になり、
 桜に付きまとってこなくなっていた。
 いればいるで鬱陶しいが、 いなくなってみると やはり心細い。

 どんよりとした空模様を見ても、 これからは雨の多い季節に入ったことが分かる。
 旅人は この季節を避けるのが普通だ。
 街道には人気が少なくなる。
 何かあったとき、 連れがいたほうが安心なのは確かだ。
 もともと人が良い上に 宝珠のご利益が効いてか、
 星白は二つ返事で快諾した。

 四人が出発しようとした時、 やはり雨が落ちてきた。
 絹糸のように細い細い粉糠雨だが、 濡れることには変わりない。
 菅笠を被り、 合羽を羽織る。
 桜の合羽は淡い黄色、 くすんだ景色の中で 鮮やかに目立っている。
 日焼けの心配から開放されて、 顔を隠していた頭巾を取り去った為、 別人のように見えた。

「桜さん、 いい年をして派手すぎないか」
 そう言う蜻蛉の合羽も 鮮やかな桃色だ。
 対して一郎は茶色、 星白は灰色で、 男二人は比べると地味だがこれが普通だ。

 星白が気づかぬうちにと、 蜻蛉の持っている宝珠には またお札を貼ってある。
 星白が目指すのは 麻本呂婆(まほろば)王国だ。
 虚空の都に後ろ髪を引かれる様子の蜻蛉を引き立て、 国境に向かうのだった。



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コメント
1388: by LandM on 2013/06/15 at 18:09:15

あっちって。。。
いや、ファンタジー的にはいいんでしょうけど。
なんにしても、旅は道づれと言う言葉もあるとおり、半ば一緒に行くことは大切ですね。

1389:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/06/15 at 18:31:51 (コメント編集)

この物語の登場人物は、全員が大雑把になっている気配があります。
作者のせいでしょうか。
そういえば、他の作品にも、大雑把な奴がぞろぞろ出てくる気がします。
やっぱり、私のせいかなあ。
まいった。

登場人物の設定を、よく考えてみます。

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