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蜻蛉の願いはキンキラキン 第五章――9




「蜻蛉ちゃんは目が高い。
 見事な馬でしょう。 古いものではないが名品です。
 ここには わたしの好みに合うものだけを選りすぐっておいてあるが、
 本家の倉には まだまだ良い物が有りますでな、
 良かったら案内しますぞ」
 八尺の連れというだけで 正体をよく知るはずのない蜻蛉に対して、
 警戒もなく 気前のいいことを言い出した。

「はあ、 ありがたいけど、 あたしなんかに 倉まで見せていいのか」
「はい、 今日は 本家で 商売仲間の食事会がありましてな。
 毎回 豪華な食事を用意するのだが、 皆、 年配の為か、 さして減りませんのじゃ。
 蜻蛉ちゃんは 美味しそうに食べてくれるので、 料理人も喜ぶ。
 ついでに 片付けませんか」
 蜻蛉は ごくりと喉を鳴らした。
「うわあ、 本当にいいの?」

「そう言ってくれると思って、 孫に 迎えに来るよう云ってある。
 そろそろ来る頃だ。 年頃も近いから 気楽に楽しんできなさい」

 使用人が 孫の来訪を告げに来た。
 引き合わされた孫は 好青年だった。
「裳名里屋の一太郎です。 可愛いお嬢さんですね」
 しっかり者らしい引き締まった面差しの さわやか系だ。
 二枚目でもある。
 蜻蛉に にっこりと笑いかけると、
 真っ白な歯が まぶしいほどにキラリと光った。

 お宝、 豪華な食事、 美青年とくれば、 蜻蛉の大好物ばかりだ。
 断る理由が何もない。
「うん、 行く。 桜さんは何処だろ」

「蜻蛉ちゃんは おばあさん思いだね。
 でも、 たまには 若いもの同士で楽しんでおいでなさい。
 桜さんには 私から上手く説明しておくから」
 蜻蛉は、 麦平の気が変わらないうちにと、 その機を逃さず 話に乗った。
 無い胸を期待に膨らませ、 上機嫌で出かけていく。


 一方、 桜は 庭を眺めてくつろいでいた。
 大金持ちとはいえ、 隠居所の庭は 広すぎるというわけではない。
 が、 手入れの行き届いた庭は 絶妙な構成によって、 深山幽谷の趣さえ漂わせ、
 実際よりも広さを感じさせた。
 一本一本の木、 一つ一つの石は さりげなく置かれているように見えて 細心の注意が払われ、
 池に流れ込む水が きらきらと澄んで きらめいている。
 ぼうっと眺めていた後から 近づいた人影があった。

「愛しの桜さん、 お願いがあります」
 いわずと知れた 八尺だ。
 珍しいことに 酒が抜けている。

「願いを聞いてくれたなら、 これを進呈します」
 無造作に、 抱えていたものを差し出して見せた。

「そ、 それは、 もしや……」



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コメント
943: by lime on 2012/12/17 at 01:19:44 (コメント編集)

八尺は、なにか企んでるのかな?
趣味は悪いけど、いいおっちゃんだと思ってたんですが。

しかし、蜻蛉。
美青年に弱すぎる・・・・。
ヒロインらしからぬ、騙されやすさw

944:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/12/17 at 18:58:13 (コメント編集)

いらっしゃいませ。
八尺、企んでますよ。素面ですしね。

> しかし、蜻蛉。
> 美青年に弱すぎる・・・・。
> ヒロインらしからぬ、騙されやすさw
アンチヒーローならぬ、アンチヒロインというのはどうでしょう。
limeさんのところの登場人物の繊細さを 薬にして飲ませてやらなくちゃ、ですかね。
うちの人たちは、どうも、みんなガサツです。

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