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蜻蛉の願いはキンキラキン 第五章――3



 着いたのは 町外れの広場だったが、
 聞こえてくる賑やかな騒音と 空気に混じる雑多な匂いが、
 田舎とは まるで違っていた。
 どの建物も 由緒ありげな風情を見せ、
 道幅も広く きれいに整備されていて、
 さすが 眞籠(まこも)国の中心、 行政府を備えた都というだけのことはある。

 馬車から降りた蜻蛉は、 異世界を見るような気分で 回りを見回す。
 同乗していた客たちは、
 一瞬後には 見知らぬ赤の他人になって 街中へ消えていった。
 行き先の案内を書いた大きな看板の隣に 告知板もあり、
 さまざまな情報が貼り付けられている。
 なんとなく眺めていた蜻蛉は 仰天した。

 いつ貼り出されたものやら、 ボロボロになった指名手配書に描かれていたのは、
 小太り男に忠告していた 長身の客に酷似していた。
「なるほど、 本当に悪い奴は 普通の格好をしているのだな。 間違いない」
 どうやら小太り男は、 警戒する相手を間違えていたようだ。

 しばらく ぼんやりとした後、
 一行は 馬車乗り場を離れ、 都の通りに足を踏み入れた。
 蜻蛉は おのぼりさん丸出しで キョロキョロしながら、
 見るもの聞くものに いちいち感動しまくっていた。
「おお!  あれはなんだ。 あっ、 すごい! 
 わあ、 桜さん見て見て、
 何で 都の人たちって 全員役者みたいにかっこいいんだろ」
 大騒ぎしながら歩いて、 だんだんと町の中心に近づいていった。

 一際賑やかな一角に みやげ物屋が店を開いている。
 砂糖にたかる蟻のように、 蜻蛉が吸い寄せられた。
「おお!  なんじゃこりゃあ。 卵形宝珠がいっぱいだ」
 店の品台に ぎっしりと色とりどりの珠が並べられている。

「へい、 らっしゃい。 虚空名物、 願いが叶う卵形宝珠だよ。
 縁起物のおみやげだ。 八色揃えて 世界を征服しよう! 
 お客さんいかがです。 ご近所に配っても喜ばれること請け合いだ」
 一瞬固まった蜻蛉が、 恐る恐る聞く。
「何人もが 世界征服しちゃったらどうするんだ」
「お客さん 面白いこと言うね。
 おまけしちゃうよ。 買って頂戴」

 赤、 青、 緑、 黄色、 紫、 白色の珠は 山になって積まれている、
 が、 黒と茶色は 隅に申し訳程度にあるだけだ。
 そこを恨めしげに見ている蜻蛉に 店の主が話しかける。
「お客さん、 見かけによらず渋い趣味だね。
 その二種類は あんまり売れないんだ。
 本物ならともかく、
 玩具のみやげ物で わざわざ汚い色のを欲しがる人は いなくてね」

 やっぱり玩具か と納得しつつも、
 蜻蛉は なにやら切なくなって、 両手に一つずつ 黒と茶色のものを手に取った。
 すると その下に 緑色が見える。
 黒と茶色ばかりに取り囲まれて ぽつんと在る緑色の珠は、
 やけに引き立って美しく見えた。
 しかも、 その珠だけには 「虚空名物卵形宝珠」 の札が貼られていない。

「おじさん、 これくださいな」
 勢いで買ってしまった。



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コメント
937: by 彦星 on 2012/12/12 at 18:43:12

(*・д・)ノ*:゚★こんばんヮ☆・゚:*:゚
ご訪問いただきまして温かいお言葉を
°・:,。★\(✪ฺܫ✪ฺ)♪ありがとう♪(✪ฺܫ✪ฺ)/★,。・:・°ございます。

応援して帰りますね。☆ъ(*゚ー^)v♪
応援ポチッ☆彡×3

938:Re: 彦星様 by しのぶもじずり on 2012/12/12 at 19:23:20 (コメント編集)

いらっしゃいませ

おおむね読み逃げさせていただいています。

賑やかな絵文字と記号入りのコメントをありがとうございます。

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