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マル子とペケ子のおとぎ話問答  一寸法師編

 正体不明のペケ子が住む、 ゴミ溜めの如きボロアパートに、
 幼稚園のせんせいをしているマル子が また来た。

「浦島太郎は止めました。 一寸法師に変更します」
 数日前、 ペケ子の話を聞いて、 イメージが ガラガラと音を立てて崩れてしまった。
 子どもたちに 日本昔話を読み聞かせようとしていたのだが、
 浦島太郎が金持ちの筋肉男では 乙姫様が心配だ。
 つい余計な事を考えて、 読み聞かせる自信が無くなったのだ。

「ふうん、 また私で練習しようという魂胆だね。
 いいとも。 聞こうじゃないか」
「一寸法師なら名字はありませんし、 金持ちかどうかも関係がなさそうですから。
 いきますよ。 昔々、 子どもの無い老夫婦がおりました。
 小さな子でもかまいませんから 子どもを授けて下さい、 と毎日 神様にお願いし、
 ついに 小さな男の子が生まれました」

「神様にお願いする時は、 気をつけないとね。
 神様は 空気を読まない。 KYだから」
 ペケ子は ふんふんと頷く。

「ええーっ、 そうなんですか! 
 あ、 いや、 前にも言いましたけど、 おとぎ話ですから。
 ある日のこと、 一寸法師は 都に出ようと思い立ちました。
 親離れを決意したんでしょうか。 一寸法師、 偉いです」

「ちっとも大きく育たない一寸法師を見限ったジジババが、
 追い出した という説もあるね」
「それじゃあ虐待じゃないですか。
 神様に授けてもらっておいて、 酷すぎます。
 その説は 内緒にしてください。 親の教育に悪いです」
 マル子は 拳を握りしめた。
 親ごと教育する気が満々らしい。 気宇壮大な計画である。

「そうは言うけどね。 元々の話は、 もっとドラマチックだったらしいよ。
 それを 歴代の大人たちが 教育的配慮の名のもとに、
 よってたかって 換骨奪胎(かんこつだったい)したんじゃないのかなあ」

「ええーっ!  駄目ですか。 教育的配慮」
 幼稚園児を預かるマル子としては、 一番に考えなくてはならない問題なのだ。

「話がつまらなくなるよね。
 トントン拍子に打ち出の小槌を手に入れちゃって、 ドラマが無い」
 ペケ子は 鼻で笑った。
 教育的配慮なんか糞喰らえ の風情を漂わせる。

「ま、 まさか、 一寸法師も筋肉男だったとか……」
「筋肉男かどうかは、 この場合は関係がない。
 実は、 かなり悪賢い奴だったらしい。
 歳をとってから 子どもに自慢したかもしれないな。
『お父さんも 昔は相当なワルだったんだ』とか言っちゃってたりして」

「それって、 ふつうのお父さんです」
 そうかもしれない。

 マル子は手元の絵本をじっと眺めたかと思うと、
 ちらりと渋茶をすするペケ子に 視線を走らせ、
 なにやら思い悩んでる。
「どうしたのかな」
 尋ねるペケ子。

「一寸法師が、 どんなふうにワルだったのかな~とか、 気になっちゃって。
 でも、 聞いたらまずいことになりそうな、 嫌な予感が……」
「そうか、 気になるのか。 お姫様をはめるのさ」
 マル子の逡巡をものともせず、 ペケ子はあっさり話し出した。
「えっ?」

「都に出た一寸法師は 立派な屋敷を見つけて、 突撃訪問するだろ。
 で、 雇ってもらう。 就活成功だ。 やるね。
 そこでだ。 寝ているお姫様の口に ご飯粒を付けて、 おいおい泣くのさ。
『え~ん、 お姫様に、 私の大事な米を食べられました。 え~ん』
 怒った屋敷の主は お姫様を追いだすんだ。
 自分の娘といえども、 泥棒は許さない。 立派な人だ。
 それに引き換え、 一寸法師の奴ときたら、 手口が汚い。
 そういう話だったはずが、 いつの間にか そのくだりが消えて、
 すんなり清水寺参詣に行くことに変わっちゃったんだ。
 何故に清水寺」
 今度は ペケ子が首をひねっている。

「さあ、 私に聞かれても。 なにしろ、 そんな話は 初耳ですから。
 やっぱり、 聞かなきゃ良かったかもです」

「でもほら、 最後は鬼退治もして、
 打ち出の小槌で大男に変身するから、 いいんじゃないか。
 今なら、 さしずめ、
 不妊治療の末にやっとできた子が、 いつまでもモラトリアムを決め込んで、
 すねっかじりのニート。 親が持て余して 追い出す。
 仕方なく就職した先で 雇い主の娘を騙(だま)すが、
 最後は上手いことをやって、 タナボタで出世しました。
 ……みたいな」

「それって、 『めでたし、 めでたし』とは言いにくいんですけど。
 いいのかなあ」
 教育問題を考えると、 納得できないマル子であった。



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コメント
910: by 十二月一日 晩冬 on 2012/12/07 at 19:41:46

今回も笑わせて貰いましたww
満足です^^
>いつまでもモラトリアムを決め込んで、すねっかじりのニート。

切れ味鋭いww

911:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/12/07 at 23:07:30 (コメント編集)

笑って頂けましたか。
よっしゃー!

ニートよ、親を捨て 都会に出よう!
なんちってね。

912:こんばんは、しのぶさん♪ by ヒーチャンダースⅣ世 on 2012/12/07 at 23:56:38

問答かぁ~

いいねぇ~、問答♪

しのぶさん、センス☆キラリ☆ですなぁ~

実は、ひーちゃんは、御伽噺が書きたいのですYO~

でも、ひーちゃんセンスでは無理ですなぁ~

めでたしめでたしかぁ~

914:Re: こんばんは、しのぶさん♪ by しのぶもじずり on 2012/12/08 at 00:22:03 (コメント編集)

ヒーチャンダースⅣ世様 ようこそお越しくださいました。光栄に存じますです。
うけた?

> いいねぇ~、問答♪
問答は、ヒーチャンダースⅣ世様のほうが 得意分野ではございませぬか。

> 実は、ひーちゃんは、御伽噺が書きたいのですYO~
御伽噺はそそるよね~ でございますです。
書きたくなったら書いてみる、でございますですよ。是非是非。

920: by 次席家老 on 2012/12/08 at 14:20:09 (コメント編集)

いいっすねぇ~。
こういうお話,大好きです。
いつか孫ができたら,
聞かせてあげますわ。

921:Re: 次席家老様 by しのぶもじずり on 2012/12/08 at 15:42:46 (コメント編集)

いらっしゃいませ
気に入って頂けましたでしょうか。
昔話の元ネタはダイナミックです。
近頃の改ざんされた絵本は、小さくまとまってしまっていて 少し可哀相。

> いつか孫ができたら,
> 聞かせてあげますわ。
わっはっはっは、教育的配慮がないばかりか、好き勝手にアレンジしてますけど、大丈夫ですか。
良い子に育つかな?

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