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蜻蛉の願いはキンキラキン 第四章――7



「昨夜の大雨で、 崖が崩れました。
 近くに 郡代官の屋敷がありますので、 そこで 休ませてくれるそうです。
 どっちみち、 今日中に温泉町に戻るのは 上り坂でもあり 無理ですし、
 戻っても 今那司に行くには かなり遠回りになります。
 通れるようになるまで 滞在させてくれるようなので、 それでいいですね。
 そんなに長くはかからないと思います」

「そういうことなら仕方あるまい。 皆さんもお聞きの通りだ。 よろしいな」
 退役軍人が、 当たり前のように仕切る。
「確かに ひどい土砂降りだったが、 がけ崩れとはついていない
 …… いや、 ついているのか」
 とは、 博士。
「土砂降りなんてあったか。 桜さん知ってる?」
 ドンチャン騒ぎをしていたのだ。 知っているはずがない。
 真手と好も うなずきあって、
「わかりました」
 と言い、 そのまま代官屋敷に馬首を向けた。

 窓から見る限り、 さすがに馬車は通れそうもないが、
 さほど大災害でもないように見える。

 代官屋敷は 思いのほか立派だった。
 なるほど これなら泊めてもらっても問題無さそうだ。
 部屋は たくさんあるだろう。

 初老の落ち着いた男が 一行を出迎えた。 風采も立派である。
「皆様 お急ぎのところ 眞に残念な事故ですが、 今 急いで人手を集めております。
 たいして時間がかからずに、 復旧できるでしょう。
 代官様の言いつけで、 今夜はお泊り頂くよう、 お部屋の準備をしております」

 男は、 屋敷を管理している使用人頭だった。
 この分では 代官はさぞや堂々とした立派な人なのだろうと、
 なんとなく皆が思っていたところに 当人が現れた。
 意外に若い。
 そしてしょぼい。
 三十代半ばの せかせかと落ち着きのない貧相な男だ。
「ああ、 皆さん心配しなくていいです。 大丈夫、 大丈夫。
 そうだそうだ、 せっかくですから 私の貴重な収集品をお披露目しましょう。
 すごいです。 うふっ」
 へらへらと楽しそうだ。

 強引に客たちを引き連れて 保管室に行く。
 疲れているのに いい迷惑だったが、
 皆 おとなしくついて行くしかないようだった。

 その部屋を、 納戸か、 もしくは がらくた置き場だと誰もが思った。
 だがよく見ると、 意味不明の品々が ご丁寧にも工夫を凝らして陳列されている。
 ただ、 まともに見えるものが 一つもない。
「代官さん、 間違って 物置にきちゃったのか」



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コメント
1470: by LandM on 2013/07/15 at 13:47:56

代官の評価しょぼ!!
 意外に若い。
 そしてしょぼい。

・・・って。
道楽代官なんでしょうかね。
跡継ぎでうぬぼれているお人なんでしょうね。

1471:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/07/15 at 15:59:54 (コメント編集)

お察しの通り、道楽ものを絵にかいたような人物です。

使用人頭とのギャップのせいで、見た目が、さらに貧相に見えるわけです。
その感じを表現してみました(笑)

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