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蜻蛉の願いはキンキラキン 第四章――5



「麗しき桜さんは いつまでご滞在ですか」
「どうする蜻蛉」
 八尺に問いかけられた桜は、 そのまま蜻蛉へと受け流した。

「臭いも消えたし、 食いだめもしたし、 先へ進もうと思う」
「ほほう、 蜻蛉は 何処へ行くのかな」
「おっちゃん、 呼び捨てかよ。 あっちだ」
 蜻蛉が指差す方向を目で追った八尺は、 うなずいて言った。
「いいなあ、 大雑把さかげん。
 そっちなら ふもとの今那司(いまなじ)の町に出るのが一番だな。
 今日は 三日に一度の乗合馬車が出るが、 乗るか。 それともてくてく歩くか」
「馬車に乗る。 食い過ぎて 歩くのが面倒くさい」
 という次第で、 馬車に乗ることになった。
 なぜか 八尺もそのまま付いて来る。

 馬車に乗ろうとする人たちが 他にも集まってきていた。
「酒臭い!  君、 私に内緒で飲んだのか」
「いいえ、 滅相もありません。 飲んでません」
 痩せた年配の男は 眉間に深い皴(しわ)を刻み、
  口をへの字に曲げて 見るからに偏屈そうで、
 使用人なのか部下なのか、 やけにおどおどと腰の低い小男を連れていた。

「うむう、 確かに ひどく酒臭い」
 老齢ながら がっしりした体躯の退役軍人らしい男もいる。

「好(よし)さん、 わたくし、 酔ってしまいそうです。 うっ」
「本当に、 限度を超えていますね。 真手(まて)さん大丈夫ですか」
 もう一組、 二人連れの中年の女は 真面目で優しそうな雰囲気をかもし出していて、
 一人は 中肉中背の目立たない女、
 もう一人は 太り気味だか 目鼻立ちがはっきりしており、
 会話から 中肉中背が真手、 太ったほうが 好という名前らしいことがわかった。
 女二人のわりには物静かな感じだ。

 八尺は 外が良いとずうずうしく御者の隣に陣取って、
 さっそく瓢箪(ひょうたん)から酒を飲み始める。
 出会ってからずっと飲み続けている八尺の体から立ち上る酒の匂いは 半端なものではなく、
 そのほうが他の乗客にとってもありがたかった。
 皆一様に ほっとした顔を見せる。

 出発間際に 若い女が急いで乗り込んだ。
 ほっそりとした上品な娘で、
 見た目で正体がわからないが、 びっくりするほど美しかった。
 しかも 蜻蛉と違って 出るところと引っ込むところが歴然としており、
 くすんだ色の質素な衣服に包まれた身体全体が 柔らかな曲線を描いている。
 偏屈そうな男の額から、 一瞬にして縦皴が消えた。
 馬車が動き出す。



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コメント
875:管理人のみ閲覧できます by on 2012/11/27 at 17:09:59

このコメントは管理人のみ閲覧できます

876:Re: 鍵コメ は様 by しのぶもじずり on 2012/11/27 at 18:34:57 (コメント編集)

こちらこそ気を遣わせてしまったみたいですいません。
こそっと残したかっただけなのです。

1326: by LandM on 2013/05/15 at 18:40:38

次の日に酒を残すのは避けたいですけどね。
私とかはなまじ酒がのめるので、結構酒が次の日に残ったりするんだよなあ。。。

1327:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/05/15 at 19:37:59 (コメント編集)

二日酔いで残るより、酒臭い残り方のほうが、本人は楽ですよね。

酒の臭いがプンプンするのも ハタ迷惑なことがありますが、
蒼い顔で吐きそうにされるよりは、周囲の人間にとってもマシかな。

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