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赤瑪瑙奇譚 第二章――1


 コクウからの提案を受けて、 マホロバも動き出した。

 さまざまな資料が飛び交い、 会議が重ねられ、
 やがて 両国の間に 書簡がやり取りされるようになった。
 効果的な技術援助を図る為、
 具体案は 専門家や学者の現地調査をしてから 相談するということになり、
 初期の具体策が 固まったところで、
 その発表と 大々的な両王家の婚姻の儀を 執り行うことになった。
 おそらく、 年が明けてからになるだろう 「大きな花火」の主役として
 誰もが思い描くのは、もちろん 華やかなセセナ姫。

「大事な花火が 湿気っているわね。
 コクウの皇太子殿下って どんな方なのかしら。
 何か知っている?」
 最近は 城の中でも薄布の面覆いを掛け、
 ますます目立たなくなっているユキアが メドリに聞いた。
「噂によると、 なんでも 少年の頃からご武功目覚しく、
 敵が お姿を見ただけで逃げ出したほどの 猛将でいらっしゃるとか。
 ご容姿の噂は 聞いていませんが、 凛々しい殿方なのでしょうね」

 言いながら、 メドリはうっとりした。

「お名前はなんとおっしゃるのか 知っている?」
「ええと、 確か、 カムライ様とか」

「あら、 そんなことがあるのかしら。 セセナに 言ってあげなくちゃ」
 あれが隣国の王子だとしたら、
 先日の使者の為、 連絡や繋ぎを取る役目を果たしに来ていたのかもしれない。
 そして、 反対派の賊に襲われた。
 他国の人間ならば、
  ほとんど使われていないとはいえ、 王家の別荘で 狼藉を働いたのも分かる。

 ユキアは セセナの部屋を 訪れた。
 侍女が、 めそめそと泣き暮らしているセセナに、 手を焼いている様子だ。
 ユキアの顔を見て、 少し ほっとしたように案内した。

「泣いてばかりいたら 可愛い顔が 台無しよ」
「……」
「ねえ、 丘の別荘で寝ていた 怪我人のことを覚えている?」
 セセナが、 ぱっと 顔を上げたが、 すぐに うつむいて 涙を押さえる。
「でも、 私、 野蛮な隣国の 見知らぬ王子と 結婚させられてしまいます」
「あの怪我人は カムライという名前だったわ、 隣国の王子様と同じ名前よ。
 もしかしたら 同じ人かもしれないじゃない」
「お姉さまは お名前を 聞いていらしたの」
「あっ、 ホジロが 聞いたみたいよ」

「いくらお名前が同じでも、 別人に決まっていますわ。
 だって 隣国の王子は、 敵も逃げ出すほどの 鬼神の如き猛将 だというではありませんか。
 きっと 鬼瓦みたいな 怖いお顔に 違いありません。
 別荘にいらした方は、 儚げに咲く 谷間の百合のように 美しい方でしたもの、
 全っ然違います」

 ユキアは 思わずこめかみに 手を当てた。
 確かに 毒に侵されて ぐったりはしていたが、
 果たして 一人前の男に「谷間の百合」という形容をしても 良いものかどうか。
 しかも、 「儚げ」 まで付けているし……。

 押し倒された時の 感触からすると、 見かけによらず 肉体派だ。
 かなり 鍛えられている。
 しかし、 説明できない。
 夜中に 賊を相手に立ち回りを演じて、 命を危険にさらした などと言えない以上、
 不可能だ。
 一方、 湿気った花火も国家の一大事。 さてどうする。


 調査団の 人選が始まっていた。
 総指揮は、 民部省の少輔タヅムラ。
 無論、 豊富な知識を備えた逸材だが、
 武術にも秀で、 見た目も 立派な偉丈夫であるから、
 バカにされることは無い、 という理由もあった。
 何しろ つい昨年まで 戦(いくさ)の絶えなかった国だ。
 やさ男では 勤まらない。

 一通り 専門家たちの人選がまとまった後、 タヅムラが言い出した。
「もう一人、 遊軍を 追加したいのですが」
「どんな人物じゃ」
「名はホジロ、 丘の別荘番をしている変人ですが、 何にでも興味を示します。
 ド素人の専門家とでも申しましょうか、
 それゆえ その道の専門家が 見落としがちな 変なことに 気がつくかもせん。
 役立たずに終わる可能性もありますが、 足手まといには ならないと思います」
「一人くらいは いいだろうて、 かまわん」
「いえ、 助手を一人 連れて行きたいそうです」
「邪魔にならぬようなら 連れて行け」

 ホジロの父親が、 調査隊の費用にと 多額の寄付を用意していたりする。
 しっかり者のタヅムラは、 経費のことも ちゃんと考えていた。


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コメント
40: by ポール・ブリッツ on 2012/05/02 at 20:43:08 (コメント編集)

面白くなってきましたねえ。

どんな陰謀を誰がたくらんでいるのか、どきどきしながら待つことにします(^^)

42:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/05/03 at 10:39:12 (コメント編集)

あざーず!

陰謀――――ありますとも。
ユキアは 「クロウ日記」のクロウの姪っ子ですので、多少破目を外す事になります。

588: by amikake on 2012/09/20 at 17:56:12 (コメント編集)

はじめまして!

ここまで、いっきに読みました。
おもしろくなってきましたね。

ご飯の支度があるので、また、時間ができたら
続きを読みます。

いろんな人が出てくるので、覚えるのが大変で、
いろんなページを行ったり来たりしてます(^_^;)

589:Re: amikake様 by しのぶもじずり on 2012/09/20 at 19:22:04 (コメント編集)

いらっしゃいませ

楽しんで頂けたのなら 嬉しいです。

> いろんな人が出てくるので、覚えるのが大変で、
> いろんなページを行ったり来たりしてます(^_^;)
一応「人物紹介」のページを作ってあります。
「目次のページ」(トップページの最後か、カテゴリーから行けます)で、その物語の頭に置いてあります。
見て頂ければ、多少は分かりやすいと思います。

是非続きを読みに来て下さい。お待ちしています。

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