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蜻蛉の願いはキンキラキン 第三章――9



 警邏隊本部は、 赤麿の不運に取り込まれた。

 どうやっても 地主の一族とは、 誰一人として 連絡がとれないまま、
 悪夢と怒濤の七日間が過ぎた。
 通報し、 名も告げずに立ち去った二人の女の消息も不明だ。

 一郎と星白が やってもいない罪を うっかり白状しそうになり、
 危うく我に返った朝に、 ご機嫌な地主と茶阿先生が 連れだってやってきた。

 赤麿がさらわれた時、
 生徒を集めて小さな演奏会をしていた と茶阿先生が証言した。
 演奏会に協力を強要されていた二人は、 犯行現場に不在だった事が確認された。
 やっと疑いが晴れた二人はもちろんだが、
 真犯人たちも、 警邏隊士たちも、 ヘロヘロだった。

 何故、 連絡が取れなかったのかの問に、 地主は満足げに答えた。
「急きょ 末息子の婚礼をしていた。
 滞りなく、 穏やかに良い婚礼ができた」
 犯人に とんでもない返事をしたのは、 単に時間稼ぎの策略だったらしい。
 言いなりになって、 すぐに赤麿を返されては困るからだった。

 地主の一族は、 不運を乗り越える たくましい精神力を 着々と築いていたが、
 花嫁の一族は そうではないからだ。
 風光明美な場所で、 平和でめでたい時を満喫していたのだとか。


 一郎と星白は 衝撃の初体験に身も心もぼろぼろで、
 まともな思考能力さえ危うくなっていた。
 この二人に関しては、 間違いなく、 桜のせいだ。
「迷惑をかけた。 すまなかった」
 隊長は 潔く謝った。
「わかってもらえて、 本当に良かった」
 星白は 涙目で答える。

「ところで、 これは あなた方のですかな」
 隊長が手にしているのは 真っ赤な卵型の珠。
「誘拐されていた赤麿君が持っていたのですが、 彼の物ではないみたいなので」
「あっ、 それを探していたのです。 貰ってもいいですか」
「こんな物をですか。 じゃあどうぞ」
 あっさり渡してくれた。

 実は、 隠れ家のガラクタ入れに転がっていたのを、
 赤麿が勝手に持ち出して 玩具にしていたのだった。
 疑いが晴れて ほっとしたのか、
 一郎が 早速 女性警邏官に愛想よく声をかけていた。

 警邏隊本部から解放された星白は、 赤い珠を両手に握り締め、
 胸に熱く抱きしめながら 祈った。
「この世から 誘拐事件がなくなりますように。 か弱い子どもが被害にあうのは嫌です」
 言い終えるや、 ばったりと倒れた。

 いったい誰が か弱い子どもなのかはともかく、
 どうやら、 本気で世界を救うつもりらしい。


                        第四章につづく


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コメント
855: by lime on 2012/11/21 at 18:36:13 (コメント編集)

一郎と星白、とんだ巻き添えでかわいそうに、とおもってたけど、ラッキーな拾い物をしましたねえ。
桜、めちゃくちゃ悔しがるんじゃないですか?

一郎と星白、すごく怪しげだったけど、本気でいい人たちなんじゃなかろうか。
そうだとすれば、これからはこの二人を応援しなきゃ・・・(w)
(いや別に、いい男だからとか、そんなことは・・・)

856:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/11/21 at 18:51:46 (コメント編集)

limeさんたらイケメン好き!
私は職場では「不細工好き」という不名誉な噂がたちました。
冗談じゃありません。なんでこんな事がっ。理不尽です。
イケメンが良いに決まってるじゃないですか。ねえ。

857: by 十二月一日 晩冬 on 2012/11/21 at 18:53:21

ここまではプロット通りなのでしょうか。それともキャラが暴走しているのでしょうか。
出来れば後者であってほしいww
――世界を救う、七夕でも願ったことないですわ

858:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/11/21 at 19:25:07 (コメント編集)

えーとぉ、……どっちだろ。

一応長編になってますけど、章ごとの短編集っぽい感じも少々ありーの、
おおまかなプロットはあるはず、たぶん。でも細かいところは行き当たりばったり風でもありーの、
つじつま合わせに、脳みそもそれなりに使い―の、

…………てきな?

七夕の短冊には、毎年「世界平和」とざっくり書いときます。
「字が上手になりますように」は 叶わなかったので、細かいお願いはしないことにしました。

859: by キョウ頭 on 2012/11/21 at 21:31:05

あぁ、宝珠がッ!
まさに「導かれている」だけではないですか!
まぁ、桜と蜻蛉はそういう役どころの方が、似合っていますかねw

というか、さすが一郎じいちゃんww

860:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2012/11/21 at 23:58:57 (コメント編集)

いらっしゃいませ。

まあ、そう言う事です。
実は、むにゃむにゃ……なわけで、コメントありがとうございます。

一郎じいちゃんは相変わらずです。

861: by ポール・ブリッツ on 2012/11/22 at 09:27:26

珠のゆくえが気になります。

現在のところどっちがどれだけ持っているのか。

珠を取り合うボードゲームにしたら面白そうです(^_^) いえボードゲームが好きなので。

862:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/11/22 at 13:04:48 (コメント編集)

ボードゲームはほとんどしません。
やったことがあるのは、五目並べと周り将棋くらいでしょうか。
珠を取りあうボードゲーム、想像がつきません。ごめんなさい。

1017: by レバニラ on 2013/01/07 at 00:36:30 (コメント編集)

どうも、こんばんはです。
第一章から、ここまで読ませて頂きました(アルコールINで)

・・・ゆるいっすね(^^;
お宝を巡って大冒険を繰り広げる内容かと思いきや、蜻蛉ちゃんも桜さんも、ほぼ何もしないで棚ぼた方式で卵形宝珠を手に入れていく物語は、ちょっと斬新かもしれません。

自分も、蜻蛉ちゃんみたいな田舎でノンビリとした暮らしをしておりますが、
以前、東京に遊びに行った時、偶然結構な厚みのある財布を一日に2度も見つけた事があり、てっきり顔に傷がある人の落し物かと思って、スルーしたのですが、
もし、その日のうちに集められれるだけ財布を集めていたら、彼女らのように、いずら世界を・・・なんて事を考えさせられました。

あと、蜻蛉ちゃん可愛いですね。
こういう元気の良い子、好きです。

1018:Re: レバニラ様 by しのぶもじずり on 2013/01/07 at 01:08:13 (コメント編集)

いらっしゃいませ。そういえば、最近レバニラを食べていません。

やっぱ、ゆるいっすよね。ゆるすぎですかね~。

> 以前、東京に遊びに行った時、偶然結構な厚みのある財布を一日に2度も見つけた事があり、てっきり顔に傷がある人の落し物かと思って、スルーしたのですが、

ええーっ、スルーしたのですか? 交番に届けなくちゃ。
落とした財布が届いていると、すげえ嬉しいですよ。
何度か(まいったなあ、良いのか?)、そういうことがありました。

> あと、蜻蛉ちゃん可愛いですね。
> こういう元気の良い子、好きです。
あざーす。

1256: by LandM on 2013/04/13 at 23:14:08

誘拐事件は金か快楽のどちらかで行われますからね。なくならないと思いますけどね。。。日本でも一年間の監禁事件の件数が350件だと考えると、毎日監禁事件が起こっているのが現状なんですよね。。。。それでも国際的にはかなり少ない方ですが。

1257:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/04/13 at 23:24:46 (コメント編集)

年間350件ですか。そんなに。
怖いですねえ。
お金と快楽は ものすごい誘惑ですものね。くわばらくわばら。

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