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蜻蛉の願いはキンキラキン 第三章――4



「わっ、 くそっ、 あちっ、 火傷だ。 あちーっ!」
 二号は服を脱ぎながら 小屋を飛び出していった。

 ざぶん と水音がしたところをみると、 川に飛び込んだらしい。
 三号も あわてて薬箱と手ぬぐいをつかんで 後を追った。
 二号の痛がる声と、 大声で喚きながら罵る声がする。

 今だ!  桜と蜻蛉が 逃げ出そうとして、 物置の扉を開けかけた時、
「おおい、 てめえら、 何をやってる。 人質は大丈夫なんだろうな。
 むやみに大声を出すな。 見つかったらどうする」
 山道から 別の声が降ってきた。
 そういう声も 結構でかい。

 逃げようとしていた二人は、 瞬時に諦めた。

 悪党どもは しばらく外でごそごそと何かやっていたが、
 今度は 三人になって小屋に入ってきた。
「このガキ! 涼しい顔をしやがって、 お前のせいだ」
 入るなり二号は 赤麿を睨んだが、 新たに来た男が たしなめた。
 髭を生やした悪人面の男だ。
「よさねえか、 大人げねえ」

 二号は 不服そうに顔をしかめたが、 びしょ濡れの服を三号に渡した。
 川でついでに洗ったらしい。
 三号はそれを部屋の隅に干して、ツギの当たったぼろい服を二号に着せ掛ける。
「いててて、 そっとやれ!  火傷が痛い」
「ちぇっ、 情けねえ野郎だ。 それより俺は腹ペコだ。 飯にしよう」
「へい、 すぐに。 もう出来てやす。
 ……えっ?  ……あれっ?  ない、 雑炊が空っぽだ」

 三号があわてていると、 赤麿が偉そうに言った。
「ちょうどいいぐあいにさめたから、 おれさまが ぜんぶ食ってやったぞ。
 まあまあだな」
「なにい!  あれを全部食ったのか。
 おまえ そのちっこい身体の何処にあれだけ入るんだ」

「急いでまた作ります」
「駄目だ。 無いと思ったら 余計に腹が減った。
 何でもいいから食える物があったらよこせ」
 大騒ぎだ。

「饅頭がありますから、 それ食べて待っててください。 すぐ作ります。
 ……無い、 饅頭もなくなってる」
 三号の悲鳴を聞いて、 蜻蛉は 自分の手がつかんでいたものに気がついた。
 皿ごと 饅頭を持ったままで 隠れたようだ。
 じっと見つめる。
 桜が手を伸ばして 食べ始めた。
 そうだ、 もう こうなったら食べてしまうしかない。
 証拠隠滅だ。
 蜻蛉も、あわてて饅頭をほおばった。

 誘拐犯が こんなに騒いでいいものだろうか というほどの騒ぎの中、
 夜が更けていった。



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コメント
837: by lime on 2012/11/17 at 10:01:11 (コメント編集)

なんか、えらい慌ただしいところに来ちゃいましたね。蜻蛉たち。

でも、悪者も、誘拐された子供も、隠れてる二人も、どこかみんな肝が座ってて、妙な奴ら(笑

838:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/11/17 at 11:38:27 (コメント編集)

すいません。
みんな おバカなのです。

おバカ路線まっしぐらに突き進みます。

1177: by LandM on 2013/02/28 at 18:08:15

騒がしいかどうかはその人によりますけどね。
ただ、騒がしいことを他の人は知らないですからね。誘拐と言うのは犯罪自体ひっそりとするイメージがありますけど、やっていることは相当派手ですからね。ただ、それを周りの人が認知していないだけですからね。

1178:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/02/28 at 18:16:15 (コメント編集)

確かに、誘拐事件は、派手な犯罪ですよね。

深く潜行しますから、見る角度によって、静かに見えるだけかも。

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