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蜻蛉の願いはキンキラキン 第二章――9



 その日、 朝早く、 遠くから 花火の音が聞こえてきた。

「うるさいな、 ゆっくり寝ておれんではないか」
 文句を言いながら起きた桜が 台所に行くと、
 蜻蛉が 朝食の支度をしている。
「おはよう桜さん。 なんか閑だな」
「うん、 何故だろう、 誰も来ん。
 あれは 開墾記念の花火だろ。
 毎年 記念日の前は まじないの依頼が多い時期なんだがな」
「どうせ今日は誰も来ないから、 のど自慢でも見物に行かないか」
「珍しいことを言うな」
「いきたい気分なんだ。 何でだろ」

 ということで、 二人は家を出る。
 扉には 例の書置きが残っていたが、 気付かずに 村の広場まで出かけていった。

 ちょうど 村長の長ったらしい挨拶が終わったところで、 ゆがんだくす玉の紐をつかんでいる。
 世話役が 合図を送った。
 くす玉が割れると 長い垂れ幕が ずるずる下りて、 村長をすっぽりと隠す。

 桜の花の形に切り抜かれた紙と 大小の大雑把な紙ふぶきに混じって
『まじないは桜の家へ!  よく効くまじない大好評!』宣伝ビラが舞い散った。
 適当に作った紙ふぶきを 確認しないまま くす玉に入れたらしい。
 長い垂れ幕にも 乱暴な文字が躍っている。
『開墾?  そんなの関係ねえ  新生町興し!  いぇーい』

 何十年ぶりの変化に、 意外な盛り上がりを見せる広場だった。
 貢献者への感謝状贈呈があり、
 引き続き 恒例ののど自慢大会になだれ込む。
 出場者も歌う歌も、 世話役が言ったとおりだった。
 寸分の狂いもない。

 蜻蛉は 笛を吹く星白に、 終始 熱い視線を送り続けた。
「そんなに星白が気に入ったのか」
 桜が あきれた声で言うと、

「ん~、 確かに 好みではある。 しかし 尋常ではなく興味が湧くのだ。
 もしかして これは恋?」
「どうかな、 おまえの様子を見ていても、 恋する女という感じがせんのだ。
 恋に落ちた者は 霊気(おうら)が違う、 すぐわかる。
おまえの霊気は ほぼいつもどおりだ。 乱暴なお子様状態のままだ。
 ……………… もしかして…… いや、 しかし……………… ありえない話ではない」

「なんだよ、 もったいつけずに教えろ」
「もしかしたら 星白も 『導きたまえ』の口かもしれん。
 そう考えれば、 鼻も胸もぺちゃんこなおまえに付きまとうのも納得できる。
 いや、 そうとしか考えられない。
『導きたまえ』同士の相乗効果のせいで、 おまえは この狭い村でゴロゴロしていたのだ」
「えっ、 あいつ卵形宝珠を持ってるのか!」

「そうとうの馬鹿でなければ、 向こうもそろそろ気がつく頃だ。
 蜻蛉、 星白を色仕掛けで………… 無理だろうなあ。
 しかし、 どうにかして 奪い取らねば八つ揃わんぞ。
 あっちも 全部揃える気満々だろうからな。
 じゃなければ『導きたまえ』とは願わん。
 油断するなよ」

 笛を吹きながら、 星白も熱い視線を蜻蛉に送っていた。
 傍で 一郎がすべての女性に 片っ端から熱い視線を送っていた。


                            第三章につづく



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820:いつぞやの件ですが by ポール・ブリッツ on 2012/11/11 at 19:07:22 (コメント編集)

話は全然関係ないですが、しのぶもじずりさんが好きだったSF小説って、もしかしたらハル・クレメントの「重力の使命(重力への挑戦)」と違いますか。これはいくらでも買えます。

あの時のコメで書いた「超惑星への使命」というのは、「重力の使命」の続編で、またしても人間の耐えきれない重力にある別の惑星でのミッションをこなすため、われらがドンドラグマーたちが宇宙船で連れて行かれて新たな冒険をする、というものです。

こちらをなくしてしまったのなら……もっ、もったいないーっ! わたしだって読んだことないのに!(^^;)

821:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/11/11 at 19:31:10 (コメント編集)

もちろん、両方です。
続編のほうは、さらにマニアック度が高くなっています。
前書きで、大笑いしました。

「超惑星への使命」の前書きを読んでから、「重力の使命」を読むと、
感慨もひとしおかと。

822: by キョウ頭 on 2012/11/11 at 22:05:47

「次回から、少しは緊迫した展開になるのか!?」
と思わせておいて、最後の一文ww

さすがは、一郎じいちゃんですネ!w

823:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2012/11/12 at 00:19:44 (コメント編集)

いらっしゃいませ こんばんは

一郎じいちゃん、やんちゃですから。
てか、ただの女好き(?)

1097: by LandM on 2013/02/08 at 18:24:33

普通から考えたら、何の自覚もなく宝珠を持っているといい加減気付きますからね。力の加減にものよりますけど、他勢力から見ると取りやすいことこの上ないですからね。

1099:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/02/08 at 18:55:56 (コメント編集)

このふざけた設定を納得して頂けましたか。
安心しました。
馬鹿言ってんじゃないよと言われたら、どうしようと思ってました。

LandMさんは、有難い読者です。

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