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蜻蛉の願いはキンキラキン 第二章――8


 叫び声が上がり、 てんでに騒ぐ中、
 真っ先に追いかけたのは 一郎と星白。
 さらに 桜が黒い袖なし外套を翻して続く。

 しかし、 くす玉は ゆがみと でこぼこのせいで、 あらぬ方向に跳ね返る。
 道を逸れ、
 民家の庭を 横切り、
 荷車の荷を ぶちまけ、
 犬に吠えられ、 猫を潰し、
 町民の喚き声を引き起こして 転がっていった。

 そして、 ひろみ爺さんの広大な牧場に突っ込んで 消えた。
 しつこく追いかけてきた三人の前に、
 牧場のさわやかな緑が 風に揺れて広がっていた。

「あれ、 何処に行ったんだろう。 この辺だと思ったんだけど……」
 言いながら 星白があたりをうろつき始めたのを、
 追いついた桜が押しとどめた。
「お二人とも もう充分じゃ。 あとは わしに任せなされ」
「でも くす玉が見つからないと 困るのでは」
 一郎も言うが、 桜は引かない。

「大丈夫じゃ。 わしを誰だと思っとる!」
「魔法使いのおばあさん」
 二人は 声をそろえて言った。

 しわがれ声で 顔も隠しているので、 本気でそう思っているらしい。
「その通り!  これから魔法を使って 探し出す。
 悪いが 秘儀だで 他人には見せられんのじゃ。
 二人とも 気をつけ!  小さく前にならえ!  まわれ右! 
 振り向くなよ。 見たら呪われるぞ」

 おとなしく言うことを聞いて
 腰に両手をあてる一郎、
 小さく前にならいをする星白、
 くるりと後ろ向きになった二人を確かめて、
 桜は 蜻蛉の気配を強くするまじないと、 失せ物発見のまじないをかけた。
 よく知っている相手なら、 そういう事も出来るのだ。
 あたりを探りながら 歩き回る。

 刈り取ったばかりで、 まだ草の匂いのする干草の山に行き当たった。
 猛然と掻き分けて、 埋もれていた くす玉を掘り当て、
 留め金をはずして開くと、 気絶した蜻蛉が入っていた。
 蜻蛉を干草に埋めなおし、 くす玉だけを男たちのところへ転がして、 息を整える。

「振り向いてよし。 見つけたぞ」
「わあ、 すごい」
 単純に 星白が桜を尊敬の眼差しで見た。
「せっかくじゃ、 これを公民館まで運んでくれ。
 まさか 大の男が、 か弱いわしに運ばせようとは 思っとらんじゃろう」
 それもそうだ とばかりに 二人はこくこくと頷いてしまった。
 思う壺だ。

 一郎と星白は 言いつけ通りに運ぶ。
 途中で 潰れた猫を介抱し、 吠え立てる犬をなだめ、
 崩れた荷物を拾う手伝いをして、 けっこうな時間がかかってしまった。
「ねえ、 一郎さん。 僕あの牧場が気に入っちゃった。 また行きたい」
「ふむ」
 しかし、 公民館では 茶阿先生が てぐすねをひいて待っていた。
 厳しい練習が再開された。

 一方、 桜は 気絶していた蜻蛉をたたき起こし、 自宅に帰った。
 二人で ごろごろしていたが、 誰一人訪ねてくる人がいない。
 暇だった。
「そういえば あたし、 学校で ヤゴってあだ名だった」
 思い出すのが、 いささか遅すぎた。



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コメント
1092: by LandM on 2013/02/05 at 13:41:14

おおう、くす玉の威力強大ですね。
まあ、確かに家よりでかい玉が転がってきたら、家もぺしゃんこになりますからね。物理学てきには正しい現象でもそら恐ろしい。。。大惨事ですね。

1093:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/02/05 at 18:27:10 (コメント編集)

大惨事とまではいかないでしょが、
おっしゃるように物理学的には、質量が大きくなくても速さが大きいと、エネルギーが大きくなりますからね。
通り道は無事にはすみません。
御町内の皆さまには、ご迷惑をおかけしました。

桜さん、反省して下さい!  ……しないだろうけど。

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