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蜻蛉の願いはキンキラキン 第二章――2



 そんなこんなで、 一向に旅に出る気配もなく 四弦琴と戯れた午後、
 迷子の青年は 再び庭に現れた。

 町まで 三往復以上できるくらいの時間が過ぎている。
(あたしのことが忘れられなくて、 戻ってきたのか)
 と 都合のいい期待を胸に、 四弦琴を置いた蜻蛉に、
「すいません、 お水を一杯もらえませんか。
 どういうわけか 町にたどり着けないのです。
 もうずっと 迷子のまま彷徨(さまよ)っていて、 喉がからからです。
 僕、 遭難しそうです」
 青年は、 間抜けな台詞(せりふ)を吐いたのだった。

「ええ、 あたしたちも お茶の時間ですから、 どうぞ上がってくださいな」
 てきぱきと二人分のお茶を用意しようとする蜻蛉に、
 桜も 黙って自分の茶碗を差し出した。
 視線だけの攻防の末、 蜻蛉が負けて 三人でお茶をすることになった。

「青年、 名は なんと言う」
 無遠慮な桜の問いに、
「あ、 はい。 星白(ほじろ)といいます。 夜空の星に 白いと書きます。
 せっかく道を教えていただいたのに すいません。
 方向音痴のはずは無いのですが、 何でかなあ、 今日はちょっとおかしくて」
 一所懸命答える姿に、 怯えが垣間見えるのは 気のせいだろうか。

「まあ、 素敵なお名前ですこと。 あたしは蜻蛉です」
「はあ」
「星白君は、 旅をしているのか」
「はい!  世界を救う為に!」
 びしっと答える 星白。
 女二人は、 口に含んでいたお茶を 噴出した。

 桜の怒鳴り声に怯える 可愛らしい青年の すっとぼけた宣言に、
 そのままずっこける。
 どうやって救うつもりか知らないが、 見込み薄だとしか思えなかった。

「んー、 もしかして 君一人でか」
「あっ、 祖父が一緒です。
 この町の宿で 待っているはずなのですが……」
 たどり着けないでいる、 という訳だった。

「一休みしたら、 あたしが 送って行きますわ」
「そうだな、 この調子では 日が暮れてしまう。
 連れがいるのでは 泊めてやるわけにもいかんだろう」
 桜の言葉に、 しまった!  その手があったか。
 こっそりと悔しがる 蜻蛉だった。

 そんなこととはつゆ知らず、 星白は、 ほっと胸をなで下ろしていたのだった。
「ありがとうございます。
 世界を救う旅は 始めたばかりなので、 まだ慣れていなくて」

 スットコドッコイな奴だった。



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コメント
784: by 晩冬 on 2012/11/04 at 19:09:27

どいつもこいつも調子がハズレていますね~、良い意味で。

このままの調子でお願いします(笑)

785:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/11/04 at 21:37:44 (コメント編集)

ご安心ください(?)

ますます調子っぱずれになるしか 道は残されていません。

1005: by LandM on 2013/01/03 at 21:54:30

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

実際問題世界を救うというのがどういう行為を指すのかがアレですけどね。実際問題宗教家に見られそうですけどね。

1007:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2013/01/03 at 23:45:12 (コメント編集)

賀正

ことしも良い年になると良いですね。

> 実際問題世界を救うというのがどういう行為を指すのかがアレですけどね。実際問題宗教家に見られそうですけどね。
言っている本人も良く分かっていないところがミソです。
それで良~いのか~。

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