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蜻蛉の願いはキンキラキン 第二章 白いくす玉を追え  ――1



 桜が早速役場へ出かけ、 身分を証明する 旅行手形を用意したにもかかわらず、
 二つ目の宝珠を捜しに旅に出る…… わけでもなく、
 日がな一日 朝から四弦琴をかき鳴らして 田舎暮らしを満喫し、
 のんびりと日を送る蜻蛉であった。

 庭に面した戸を 大きく開け放ち、 暖かくなりだした風を 楽しんでいたりする。
 庭には、 淡い黄色の蒲公英(たんぽぽ)、 鮮やかな紫の壷菫(つぼすみれ)、
 水色をした 犬の陰囊(ふぐり)が ちらほらと咲いて、 たまに ニワトリが走り抜けていく。
 穏やかな 良い日和だった。

 そこに、 四弦琴の音に誘われたように、 一人の青年が現れた。
 すらりとした長身の身体、 さらさらの髪、
 いぶかしげに震える 長いまつげに縁取られた優しい目、
 上品に通った鼻筋、 きりりと引き締まった唇を持つ青年は、
 いでたちから見ると 旅人のようだった。
 腰に 小さな袋を付け、 長い笛を挿している。

「おお!  好みの男  ど真ん中!」
 思わず 小声でつぶやく蜻蛉だった。
 自分の四弦琴の腕も、 美青年を引き寄せるまでになったか とほくそえむ。
 いきなり愛の告白とかされたら どーしよう、 とかも心配していた。

「こらーっ!  ひとんちの庭に 勝手に入り込んできて、 いったい何の用だ」
 蜻蛉の甘い妄想を、 すべてをぶち壊しにする怒鳴り声は、
 言わずと知れた桜だ。
「ひえーっ」
 驚いた美青年は、 あられもない姿で 庭の楓にしがみついた。
 よほど怖かったのだろう。

「あ、 あのぅ、 すいません。
 僕迷子になったみたいで、 町に出る道を教えてください。
 お願いしますう」
 庭木を抱きしめたまま、 なみだ目で訴えている。

「おばあさま、 おやめになって。 おびえていらっしゃるじゃないの」
 気持ち悪い声で 諌(いさ)める 蜻蛉を蹴飛ばして 庭に出た桜は、
 青年を幹から引き剥がし、 ぴしりと指を指す。
「青年、 あっちだ。
 道なりに進め。 一本道だからな、 迷いようが無いぞ」
 怯えながらも、 青年は きちんと頭を下げて礼を言うと、
 そそくさと立ち去った。

「ああ、 行っちゃった」
 がっくりと 蜻蛉は肩を落とした。
「あんなのが良かったのか。
 だが、 世界征服をするんだろ。
 色恋沙汰に 現(うつつ)を抜かしている場合ではないと思うが」

「何を言ってる。 冒険に恋はつきものだろう。
 刺身に醤油、 ご飯に味噌汁、 納豆にネギ、 冒険には恋」
 桜は真正面から見据えて、諭すように言う。
「蜻蛉、 世界を征服したら、 男なんぞ 選り取り見取りだぞ」
 桜は 説得なんかされないのだ。

「……選り取り見取り、…… ステキな言葉だ」
 蜻蛉は、 うっとりと夢見る眼差しで 青い空を見上げた。



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コメント
776: by ポール・ブリッツ on 2012/11/03 at 19:16:18 (コメント編集)

より取り見取り……蜻蛉ちゃんを「食べ放題バイキング料理店」に連れて行ったらどうなるか見たい(笑)

777:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/11/03 at 19:34:32 (コメント編集)

体の具合はどうですか。ネットに出入りするより、ゆっくりと休んだ方が良いんじゃないのかな。

大喜びでしょうね。ポールさん、お財布は大丈夫ですか。

782: by lime on 2012/11/04 at 11:28:56 (コメント編集)

あ~あ。せっかくの美青年が、一蹴されちゃったw
甘い冒険が始まる予感だったのに、そうはいかないですね、しのぶもじずりさん。
そうか、蜻蛉は綺麗な男も好きか^^
そうですよね。冒険に恋はつきものです。

783:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/11/04 at 11:54:56 (コメント編集)

蜻蛉は見た目にひかれるお子様です。
騙されやすいタイプだと思います。
簡単に世界征服を狙ってしまう子ですから。
冒険に恋はつきもの、とか言っちゃってますが、真剣な恋なんて分かっちゃいません。

957:年末挨拶 by LandM on 2012/12/27 at 17:29:17

狸の皮を計算するわけではないですけど。
まあ、そういうこともありますわね。
夢を抱き続けるのは大切ですけどね。
世に生まれる皇帝というのは誰よりも貪欲でなければならない・・・ということもありますしね。そういった意味では資質があるのかもしれません。

クリスマスも終わり、もう今年もわずかですね。
今年一年たくさん訪問していただきありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。

958:Re: 年末挨拶 by しのぶもじずり on 2012/12/27 at 17:46:56 (コメント編集)

4月に、思いきってブログを始めて以来、とてもたくさんの方の訪問して頂いて、
私にとって、本当に素敵な年でした。
初めてのお正月を迎えることになって、感無量です。

こちらこそ、コメントまで頂けて、嬉しかったです。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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