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蜻蛉の願いはキンキラキン 第一章――9



「旅に出る気にはならんか。
 今頃は、 てっきり 卵形宝珠を求めて、 いざ冒険の旅へ
 とか 盛り上がっているかと思ったのに」
「なんない。
 この部屋で 、四弦琴を弾いて、 のんびりとくつろいでいたい気分なんだ」

「へえ~、 そうなんだ。 んっ? 
 あっ!  うわあああああああああああ! 
 わたしの大事な日除け頭巾があ!  なんで、 こんな、ことに」
 卵形宝珠の汚れ落としに使った 薄紫の布をつまみ上げ、 今にも泣き崩れんばかりの桜に、
 蜻蛉は ポリポリと頭をかきながら謝った。
「ごめん」

「おまえがやったのか! 
 これが無いと わたしの美しい肌が日焼けしてしまうではないか。 どうしてくれる!」
「日焼けした小麦色の肌も 似合うと思うよ。
 健康的なおばあさん って感じでさ」
「わたしだって似合うとは思うが、 ならないんだ。 小麦色に! 
 赤く爛れて 皮がむけて、 そりゃあ酷いことになる。
 日除け頭巾は必需品なんだよ。 それをよくも」

「ほんとにごめん。 つい、 手近にあったもんで……」
 言いながら、 蜻蛉は 四弦琴をぽろろ~んと弾いた。 良い音だ。

「なあ、 桜さん。 黒宝珠って見栄えがしないなあ。
 他の宝珠って 何色があるんだろう。
 きれいな色をしたのが欲しいな」
 未練がましく、 汚れきった日除け頭巾を見て 渋面をつくっていた桜が、 顔を上げた。
「そこまで何も知らんのか。
 それなのに、 突然気にし始めたのは、 どういうことだ」

 聞かれて、 蜻蛉は考えた。
 昔、 誰かに聞いたことはある。
 何と言っても 卵形宝珠の言い伝えは有名だ。 子どもが一度は憧れる。
 だが、 最近になって、 かなり本気で欲しい と思うようになったきっかけがあったような気がする。
「おお!  そうだ。 本を見た。
 桜さんの机の上に在った。 きれいな卵の絵が表紙になった本だ。
 あれを見つけて その気になった」

 桜が、 一度納得した顔を、 ん?  という感じで顰(しか)める。
「本を見たってか、 読んだじゃなくて……。 だったら読め。
 そうすりゃ 少しはわかるようになる。
 いいか蜻蛉、 本は見るものじゃなくて読むものだ」

 蜻蛉は、 戸惑ったような、 うんざりしたような、 微妙な表情をした。
 たいがいの本は 十行以上読むと寝てしまう体質だった。
「桜さんは 読んだんだよね。
 ものは相談だが、 かいつまんで説明してくれると、 すごーく好きになる気がする」
「大丈夫だ。 今でも 充分に好かれている自信がある。
 自分で読め。
 後ろの解説に 上手くまとめて書いてあるから 分かりやすいぞ」



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コメント
764: by lime on 2012/11/01 at 19:01:58 (コメント編集)

解説って、わかりやすく、うまくまとめてあるもんですよね。
あの、まとめる能力がうらやましい。

しかし蜻蛉。かなり面倒くさがりだけど、さて、冒険の旅は、始まるのでしょうか。
四畳半ファンタジーも、面白そうですが^^

765:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/11/01 at 20:16:46 (コメント編集)

うわああ、どうしましょう。次回はその解説文を出します。上手くまとまってるか心配になってきました。

出不精の冒険野郎ってありですかねえ。
蜻蛉が重い腰を上げるのはいつになるやら。たぶん、そのうち出かけます。

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