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蜻蛉の願いはキンキラキン  第一章 黒い霊力――1



 生みたての卵を両手で天に奉げ、 睨みつけている娘が一人。

「うーむ、 こんな田舎にくすぶっている場合じゃない!」
 ぼさぼさの 短い髪、
 そばかすの浮いた 低い鼻、
 前掛けも付けずに 鍋の前に立っている姿は、 田舎にこそふさわしい。

 そこは正真正銘、間違いなく田舎町の端っこ。

 眞籠(まこも)国、虚空(こくう)州 端子(はしっこ)郡、
 井中(いなか)町 大字(おおあざ)九咫烏(くたがらす)。

 庭を元気に駆け回るニワトリたちのおかげで、 今日も産みたての卵が手に入るのだ。
 聞こえてくるのは、 そのニワトリたちの のんきな鳴き声と、 可愛い小鳥のさえずり、
 そして、 せいぜい たまに吹く風の音くらいのものである。

 掘っ立て小屋と言っても差し支えない ボロ家の台所に、 変哲もない朝はやってきていた。


「なあにをやっとる。 蜻蛉(とんぼ)、腹が減った。 眺めていないで 早く食わせろ」
 後ろから 乱暴な声が上がる。

 こちらは、 黒ずくめの怪しい衣装に身を包み、 長い黒髪をきれいに結い上げた女。
 一見、 年齢不詳、 挙措動作も意外に優雅だ。

「うるさい!  くそばばあ。 たまには自分で めしぐらい作れ!」
「ばばあと呼ぶな。 桜さんと呼べといつも言っとろうが。
 六十歳近くなると、 いろいろと面倒になるんだ。
 近頃の若い者は、 年寄りを労(いた)わることを知らんのか」
 態度が すこぶるでかい。

「六十歳までには まだ半年あるぞ。 いきなり年寄りになる気か。
 あたしよりも元気なくせに」
「たかが十四歳の小娘が、 生意気を言うな」
「十五歳だ!  孫の年を、 いつになったら 数えられるようになる」
 はたから見れば 怒鳴り合いだが、
 当人たちは、 親しい家族の会話だと固く信じている。
 いつも通りの、 さわやかな朝食前のひと時、
 罵(ののし)り合いをひとしきり楽しんでから、 食事になった。

「なあ、桜さん。 卵形宝珠(らんけいほうじゅ)って 知ってるよね」
 桜は、 食事をほおばりながら、 器用に片眉を上げた。
「ほほう、 この間から、 毎朝 卵を睨みつけているのはそのせいか」

 この世のどこかには、 八つの卵形宝珠があるという。
 卵そっくりの形をした 八色の宝珠。
 一つ手に入れれば、 ささやかな願いが叶う。
 全てを手に入れて、 ある場所に丸く並べて 祈れば、
 その中心に、 踊る妖精が現れて、
 大きな願いを聞き届けてくれると伝えられている。

 しかし、 広い世の中に たった八つ。 簡単にはいかない。
 手に入れた人間の話が、 昔話のように 伝えられているだけだ。
 それも、 全部手に入れた話はない。

「あたしも、 そろそろお年頃だし、
 こんな片田舎で ばばあとくつろいでいる場合じゃないと思うんだ。
 欲しい、 卵形宝珠が欲しい。
 そして、 華麗な転身を遂げたい!」
 目ん玉をキラキラさせて、 蜻蛉は あらぬ彼方を見上げた。

「たいした物じゃないぞ」
 桜は パクリと朝食を口に入れた。
「なんだよ、 知ってるような、 その言い方」

「知ってるもん。 昔、 見つけたことがある」



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コメント
730: by ポール・ブリッツ on 2012/10/24 at 19:05:12 (コメント編集)

ど、ド○ゴンボール?

その言葉が頭をぐるんぐるんしてます。

でもいろいとと技巧を凝らしてくるんでしょうねえ。

続きを期待しております!

733:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/10/24 at 19:37:43 (コメント編集)

> ど、ド○ゴンボール?
似たようなものですが、主人公は成長しない予感がします。少なくとも、金髪になったりはしません。

> でもいろいとと技巧を凝らしてくるんでしょうねえ。
あまり期待されてもぉ……。
おふざけのかる~い物語と思っておいてください。

734: by そうへい on 2012/10/24 at 23:20:08

おじゃまします

少し休んでいる間に、くれないの影は終了し
短編の香美位山もほぼ終わり、さらに短編を越えて
新作になっていて気分は浦島太郎(偶然です)

赤瑠璃奇譚とくれないの影は何故か私には日本とは
感じられないお話でした。
(だから何という訳ではないのですが)
それとは関係無く、鹿の子の特殊能力?について
色々ともっと深く踏み込んで欲しかったです。

香美位山と蜻蛉の〜には、何故か異国の臭いを
感じません。
作者が同じで似たテンポを感じるのに、
明らかにそう思うのが、何となく不思議です。

話は飛んで、
同時期に全く別の場所で同じ発想が起こる。
理屈や原理はともかく、私は信じている方です。
簡単に言えばデジャブもその一種かもしれませんが、
あると思います、私は。

飛びついでに、もひとつ
その後、金太郎はその怪力を源頼光に買われ、頼光四天王の
1人となり鬼退治をする。までがお話と思っていました。

長々と、おじゃましました

735:Re: そうへい様 by しのぶもじずり on 2012/10/24 at 23:53:17 (コメント編集)

ご丁寧な感想をありがとうございます。

思い当たる節があるような気がします。
書いている時、「赤瑪瑙奇譚」と「くれないの影」はファンタジーの世界であって、日本じゃない。という意識があったように思います。「香美位山」は、特にそういう意識もなく、書きました。
何をどうしたという事ではなく、単に意識だけの問題だったのですが、面白いものだと思いました。

鹿の子の特殊能力は、踏み込みが甘かったですか。
大変参考になります。シリーズの導入編みたいになったかも。

「金太郎」派端折りすぎましたかしら。
私の記憶にあるのは、幼児用の絵本なので、頼光の家来になるところで終わっていたように記憶しています。
あまり面白いお話には思えませんでしたので、扱いが雑になりました。

ご意見、ご感想、嬉しかったです。

736:管理人のみ閲覧できます by on 2012/10/25 at 09:19:56

このコメントは管理人のみ閲覧できます

742:Re: 鍵コメM様 by しのぶもじずり on 2012/10/27 at 23:29:42 (コメント編集)

せっかくのお誘いですが、ごめんなさい。
自分のブログを管理するのに手いっぱいでございます。
発展すると良いですね。

769: by LandM on 2012/11/02 at 20:56:29

家族とはいいものですね。
ということを教えてくれる関係性ですよね。
こういう会話は見てて和むのかどうなのか。・・・は分からないですけど。どういうコミュニケーションが一番大事なのかは当人たちが分かっている。そういう感じで良いですね。

772:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2012/11/02 at 22:02:21 (コメント編集)

祖母と孫だと、母と子の生々しさがなくて、お気楽な家族になれているのかもしれません。

二人とも遠慮会釈もなく、やりたい放題です。

読んで頂いて、ありがとうございます。

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